天使の声2《2》 ページ2
駅に向かう通りから一本入った所に公園がある。
ブランコや滑り台、砂場などはなく小さな噴水と花壇やベンチがあるだけの公園だ。
公園の前の少し古いアパートが僕の家だ。
毎朝、公園の横の珈琲館でマスターの入れる珈琲を飲んで僕は会社に行く。
マスターが一杯一杯ドリップでたててくれる珈琲はどんな高級な店の珈琲よりも美味い。
アパートから歩いて駅まで10分、そして駅から電車に乗り20分。
今日もいつものように珈琲を飲み歩いて駅向かう。
階段を上がりホームで待つと準急電車が入ってきた。
今日はその電車にはなぜか乗らず5分後の電車に乗ることにした。
空いている席に座り鞄から本を取り出し読み始める。
20分間の読書タイムだ。
次の駅に電車がホームに着きドアが開いて人が入ってくる。
〜隣、いいですか〜
天使のような柔らかい声に僕は読んでいた本から目を離し「あっ、はい」と言って左側に少し体を移動させた。
隣に座った彼女はバックから一冊の本を出し読み始めた。座ってスマホを操作する人が多い中、本を読む若い女性は珍しい。
顔を右側に向けて彼女を見たい。
顔を右側に向けて彼女を見てはいけない。
僕の頭の中で格闘が始まり自分の読んでる本の一行目と二行目を何度も何度も繰り返し読んでる自分がいる。
彼女が読んでる本も気になる……が、それ以上に僕の右腕と彼女の左腕がくっついている。
ー少しの間の幸せー
彼女の声が脳裏に焼きつき
隣いいですか
隣いいですか
隣いいですか…………と何度もリピートされる。
一目惚れした。
俺 榎本龍之介 38才 独身
大手町にある小さな会社に勤める冴えないサラリーマン。
友達……いるのかいないのかわからないし趣味もない。
内気で無口で内向的な性格。
女性とお付き合いしたこともないから、自分勝手に妄想できる本を通勤時間に読む。
そんな僕が一目惚れした。
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作者名:りたのすけ | 作成日時:2019年8月3日 19時