250話 ページ32
斑鬼turn
私は目の前にある白い扉を開けて、｢斑鬼海斗｣と書かれている病室へ入る。
目にした先には、ベッドに横たわっている青髪のやせ細った祖父と、側に座る白髪の祖母が仲睦まじく会話を弾ませていた。
「A……久しぶりだな」
「久しぶり、お祖父ちゃん」
「いらっしゃいA。今日もおつかれさま、今お茶入れてくるよ」
「うん、ありがとう。転ばないでね」
「失礼だね、まだそんな歳じゃないよ！」
二人はやってきた相手が私だと分かると、柔らかな笑みを浮かべ歓迎する。
そしてお茶を入れるために立ち上がった祖母は｢待っててね｣と言いながら、自分と同じくらいの高さにある私の頭を撫でお茶を取りに病室を出た。案外子ども扱いをされてるのが解せない……嬉しいけどさ。
「……もう半年か。
おまえが来ると、時が過ぎるのは早いと感じるよ」
「私もそう思う、もう半年経ったんだって。
お祖父ちゃん……身体は大丈夫？」
「ん？あぁ、去年より軽くなってるよ。
それよりA……お前の方こそ大丈夫か」
来るたびに聞かれるこの言葉。
「……うん。大丈夫」
「……」
祖父は勘が鋭い。無理しているのだって、この人の前ではいつもバレバレ。
「一度だけ、吐き出せたから」
「！……そうか」
いつもと違う回答を貰った祖父は驚いた様子を見せるが、すぐ安心したような笑みを浮かべて私の頭を撫でる。
お祖父ちゃんの方こそ辛いはず。
それでも一番に私の事を思ってくれる優しさが、とても嬉しくて痛い。
「あ、そうだ……今日も言われた花買ってきたよ。窓際の瓶に入れておくね」
「ありがとう。毎度すまんな、A」
祖父に言われた言葉に返事を返したとき、その際ビニール袋の中に入れた花を放っておいていた事に気づく。
私は祖父に断りを入れ、窓際に並べてある花の入っていないいくつもの花瓶に急いで花を入れる。
そんな光景を、祖父は微笑ましそうに見守っていた。
「別にいいよ。
でも、お祖父ちゃんって花好きだったっけ」
「……ああ、好きだよ」
祖父はここへ来る前から花とは無縁だったはずだ。
それなのに、祖父はここに来てからは毎度花が欲しいと私へ頼む。突然とした祖父の行動には元々疑問を持っていたが、私は気にすることをしていない。
「ああ、その花はこっちに……」
「えーっと、こう？」
「そうそう」
……本人が楽しそうだからね。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢桜(プロフ) - うららさん» そっそそそ尊敬だなんてそんな嬉しすぎますっ！！応援ありがとうございます精一杯頑張らせていただきます！！ (2020年9月23日 19時) (
レス) id: 505f8e7c76 (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - やばいです!!!悲しくてでも見たくなるそんな話ですね。ほんとに尊敬します！これからも応援しております！頑張ってください!!! (2020年9月23日 17時) (レス) id: e068332aca (このIDを非表示/違反報告)
夢桜(プロフ) - 猫好好さん» わぁぁありがとうございます好きになってもらってとても嬉しいです！！いやぁ大変おまたせしました、これからもこの作品をどうかよろしくお願いします！！応援とても嬉しいです……！ (2020年9月2日 18時) (レス) id: 505f8e7c76 (このIDを非表示/違反報告)
猫好好(プロフ) - 続編おめでとうございます！(*’ω’ﾉﾉﾞ☆ﾊﾟﾁﾊﾟ ﾁヒロアカ小説の中でもかなり好きな作品なので待ってました！これからも更新頑張ってください！！！応援してます！ (2020年9月2日 18時) (レス) id: 184bdcfa18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢桜 | 作成日時：2020年9月2日 17時
