361話 ページ7
斑鬼turn
「……？」
「昼飯食ってねえのもあるだろうからな、応急処置として食っとけ。言っとくが立つなよ」
すぐ側のトレイから持ち運ばれた海苔が巻かれているおにぎり二つ。ラップに一つずつくるまれていて、それを乗せたトレイを片手で手渡しされ両手で受け取った。
「……かたち、ばらばらですね」
「不器用なもんでね、大目に見ろ」
首を掻きながらそっぽを向く相澤先生を横目に、私は手渡されたものの一つを取る。大きさ自体はあるけど、握り不足で形が崩れてるからか、覆う両手にすっぽりと収まった。
「……海苔、不格好」
トレイに乗っているものと、両手に包まれた二つのおにぎりを見る。
一つは並のおにぎりよりも一回り大きく、至極普通の形が整ったもの。もう一つは不格好に海苔が切れていたりと、初心者の手作り感が抜けていないもの。
どう見ても違う人が作ったことは一目瞭然、それくらいおにぎりの出来は全く違った。
「お前が食べないなら、もったいないが捨てるしかないな」
「……さすがに食べますよ」
一向に手を付けなかったからなのか、首を掻いていた腕を下ろし、見下すようにんまりと笑われながら言われた言葉に沈黙しながらも答える。
単に冗談で食わせるためのことなのか、弄るために笑ったのかは不明だ。
「それでいい」
ふっと鼻で笑い、その答えに満足したらしい相澤先生は静かに鉄パイプへ座り直し、力の抜けている私の左肩へゆっくり手を伸ばす。
包むよう触れる温かい体温が、香りのようにしっとりと芯まで体へ染み渡る。
「俺が見てる。明日も頑張れよ」
気怠げなのにも関わらず、伏せられた死んだ瞳はどこか力強くこちらを見た。入るはずのない光が灯り、相澤先生の目は黒曜石のよう光り輝いていた。
射抜く瞳がとてもきれい。
「……はい」
どこか見覚えのあるような、何処かで見た宝石のような、記憶を辿っても言い表せない程、その真っ黒から灯るはずのない光が綺麗で、私はこの担任がいてくれれば不思議と素直になれる気がした。
"他"と違ってちゃんと見てくれる。
ふと、そんな気がした。
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ポウ(プロフ) - 最後まで読ませていただきました。作者さんの気持ちが伝わりました。いつかまた新しい物語がくること楽しみにしてます。そして、私はこのお話好きなのでこれからも何度も読ませていただきます。 (12月24日 22時) (
レス) id: 4b00597d9c (このIDを非表示/違反報告)
夢桜(プロフ) - 花さん» ご感想ありがとうございます！モチベーションの問題で中々更新頻度が上がることはないのですが、そう思っていただけてなによりです。なるべく更新を増やせるよう頑張りますので、どうかゆっくり続きをお待ちしていてください！！ (2022年8月9日 10時) (レス) id: 505f8e7c76 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 初めまして✨すごく面白くて一気読みしちゃいました！続きめちゃくちゃ楽しみにしています！頑張ってください(^^) (2022年7月25日 22時) (レス) id: d1eaf7b495 (このIDを非表示/違反報告)
夢桜(プロフ) - †NANA†さん» 誤字指摘ありがとうございます！事細かに文を見て頂きとても助かります。 (2022年1月18日 20時) (レス) id: 505f8e7c76 (このIDを非表示/違反報告)
夢桜(プロフ) - 芥さん» コメントありがとうございます。描いて頂けるだけでとても嬉しいので、無理だけはなさらぬようお気をつけください。 (2022年1月18日 20時) (レス) id: 505f8e7c76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢桜 | 作成日時：2021年9月19日 19時
