それから ページ6
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『"アンタのたまに出る日本語が嫌い、あの女と出会ってからね、アントニーがイカれたのは"』
『"家があるだけ有難いと思え疫病神"』
『"お前のせいでウチはおかしくなった!!!!このクソガキが!!!!!"』
『"その目見るとアイツを思い出す。大体ドラッグまみれになったのも自業自得じゃない、生きてても死んでても迷惑しかかけないのね!!!"』
殴る、蹴る、刺す。毎日この三本立て。
特に兄を彷彿とさせる眼が気に喰わないらしい、顔中心に攻撃してきた。
傷を隠すため長袖を毎日着て、学校ではいきなり性格が変わった、体育の授業にロクに参加しない、と苛めを受けるようになった。
ここはマルセイユ、北部。フランス最悪の治安を誇る地区。住民はおろか、警察も機能しない。
クラブを辞めなかったのは、コーチがこの子には物凄い才能があると叔母を説得したからで、確かに将来金稼ぎ役になるかもと納得した叔母は高い月謝にグチグチ文句を言いながらも許容した。
それでも、かなり気が立っている時は夜に庭に出され、バットで殴り放置。
一度雪の降る夜に締め出された事がある。お腹にできたぐちゃぐちゃの傷に、雪が染み込みじんわり溶けていくのが痛すぎて、ひたすら蹲っていた。
震える脚に何か当たり、ボールを視界の隅に捉える。
蹴ったら案外痛みを忘れられたから、蹴り続けた。
サッカーをしている間は絶望的な環境、失った家族を忘れることが出来たので隙さえあれば何時でも蹴り、走った。女で、周りより体力も上背も無いから努力は死ぬ程した。
そのお陰か14歳でU17フランス代表に選ばれるという異例の大出世を成し遂げたが、キョドキョドする仕草が気に入らなかったのか、チーム唯一の女だったからなのか、監督には無視されチームメイトからは嫌がらせをされ、出た試合は1試合。15分だった。たった15分で2ゴールを決めた事で各地の新聞は沸き立ち報道したというが、口数少ない地味なチビに誰かが注目する訳でもなく、すぐ忘れさられた。
運良くオファーがあったフランス最高のサッカークラブ、パリ・サンジェルマン、PSGの下部組織に在籍し、狭き門ではあるがプロを目指そうと入った当初は意気込んでいた。んで、苛め。しかもかなり酷めの。
どうなるんだろ、この真っ暗な人生。
…あの時
殺してくれれば良かったのに。
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テヤンデェ黙っとれおんどりゃあ(プロフ) - コバさん» ゥ゛ゥ゛ウ゛(振動)コメントありがとうございます😭アイラブユーです (1月13日 21時) (レス) id: b537d61366 (このIDを非表示/違反報告)
コバ - 一言で言うと好きです、、 (1月13日 19時) (レス) id: e88cbb1189 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テヤンデェ黙っとれおんどりゃあ | 作成日時:2024年1月7日 13時