あの子が幸せになるまでの記録。 (ページ13)

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「撮影お疲れ様でした、チョコ食べます？」

なんて紳士的な態度。やはりスーパースターともなると何処ぞのエリックとは訳が違うのだ。

実を言うと若干人見知り気味なんですが、こんなに話していて気持ちの良い紳士ともなると話は別であって。

『…良いんですか、食べます！』

「2つどーぞ」

優しい、好き。

とか呑気に思っていた自分を今となっては呪いたい。

過去の自分に教えてあげたい、まんまと罠に嵌められてますぜ、と。

私はまだ知らなかったのだ、"あの"大谷翔平が、とんでもないいじめっ子であったことを。

***

この初コラボCMは反響がかなり良かったらしい、定期的にCMを更新する事になった。その度ギャラ貰えるしラッキー、とかこれまた呑気なことを。思っていたのだ。

「クレールさんガムとかって噛みます？」

『やたっ！！食べます！噛みます！』

「はいどぞ」

ななななーんて優しいんだ！！毎回お菓子くれるじゃんこの人〜！！素晴らしい人格者ですな〜〜！！

と、ワックワクしながら包装紙を開けると。

『……なんですか、コレ』

「……ぶふっ」

銀の紙に包まれていたのは、期待していた物ではなく。

白いちっちゃい消しゴムで。

『……これを、食えと？？』

「いやー、何時まで騙されるかなって」

眉を思いっきり眉間に寄せ、睨んでやると何故かますますニヤニヤ顔になった。泣きそう。

「…翔平、あんまいじめるな」

「俺の予想では、気付かず口に入れるかなーとか思ってたんだけどな」

『ガ、ガム……』

「何、そんなにお菓子欲しかった？食べていいよ、それ」

とまた意地悪く口角を上げる。

前言撤回、大っっっっ嫌いです、この人。

『"エリックさん助けて……"』

「"俺は面白いけどな、イジられ慣れていないお前がいじめられ困惑する様"」

『"この車とめて！！！嫌だ！！行きたくない！！！"』

「"おいあっちはわざわざフランスまで来て下さってんだぞ、ドタキャンは普通に迷惑"」

『ウ゛ッ』

確かに……
オフシーズンだから他の仕事も兼ねフランスまで来てるとか言ってたな…
だがしかし、いずれにせよいじめは許されるものではございません。

『"……Aさんは体調不良ですとか言えない？"』

「"言う訳ねーだろバカが、寧ろピンピンしてますとか言ったる"」

全ての希望は絶たれたり。

『あ゛あ゛ああ………』

「"ドンマイですね！！"」

いよいよお腹が痛くなってきた。