あの子が幸せになるまでの記録。 (ページ12)

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CMのお仕事にて.1 ページ12

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「"お前、頼むから大人しくしてくれ"」

手渡された衣装を身に纏い、髪の毛をワックスでガチガチに固められていると、エリックさんが蒼白な顔で頼み込んできた。

『"もう大人しいんですが"』

「"絶対に、絶っっっ対に、走り回ってコンセントぶち抜くとか、コーヒーぶち撒けるとかやめろよ"」

何でまたそんな昔のことを。ヘアメイクさん笑ってるじゃん、恥ずかしい。しかも故意の出来事では無く。

『"だから、まだ何もやらかして無いじゃん、何でそんなにぎゃぁぎゃぁ騒いで──「"共演者が"」

頭を両手で抱え、本当に具合が悪い、とでも言うように俯いた。

「"大谷翔平、なんだ"」

示し合わせたかのように、「遅れました、すみません」との声と共に彼、そう、大谷翔平がスタジオに足を踏み入れた。

確かに看板でよく見かける人なので、有名人だとは思っていたが。先程のエリックさんの口調から察するに、なかなかのスーパースターらしい。肩幅の広さ、脚に付いた筋肉から野球選手なのだろう。看板でもバット持ってたしな。

自分でも言うのもアレだけど、話題性のある二人のコラボと言った所でしょうか。成程ね。

『コンニチハー』

「え、日本語喋れるんですか」

『長らく使っていないのでカタコトですけどね』

「日本とフランスのハーフでしたっけ」

『イエスイエス』

大谷さんの後ろでは、もぎたてバナナのように緑色となったエリックさんが死にそうな顔で必死に手でバツ印を作っている。余計な事喋るなってか。はん。

『オオタニサンは有名なんですか?』

ヘアメイクさんも、大谷さんもスタッフさんも目を見開き変な沈黙がこの場を支配してしまった。

気になるエリックさんの顔面はいよいよブルーハワイへ。

なんか変な事言ったっけ。

「"はい、もうクレールA退場致します、辞退です辞退。短い時間でしたがありがとうございました～！！"」

『"ちょちょちょ、勝手にやめてくださいよ！！何考えてるんですか！！！"』

「"お前こそ何考えてんだ！！！胃潰瘍出来るわ！いいか耳でも鼻でもかっぽじって聞けよ！この方はな！！ショウヘイオオタニ！日本が誇る大スター！知らん奴はほぼ居ない！！"」

……ほう。んーー、なるほどね！

「"あの～、そろそろ撮影に…"」

素晴らしいタイミングである。

『"オッケーです、さあ撮るもん撮りましょう！"』

そしてクルっと華麗なUターンを披露し颯爽と走り去った。

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