あの子が幸せになるまでの記録。 (ページ11)

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クソガキページ11

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凄い、凄い。凄すぎる。

『"…億万長者なっちゃうかも……"』

年収爆上がり。
Ｗ杯で優勝しチョット有名になった途端、あちこちからCMのお誘いが来ていた。
稼げたらいいなー位の気持ちでいたんですけど…
昨日もサランラップのCMに出たし、これって───

『"才能があるってコト！！？？"』

「"黙れ、俺は運転中だ"」

異様にテンションが低いこの人はエリックさん、Ｗ杯直前に付いたマネージャー兼医師である。過去の事も有り精神的不安定な私のかかりつけ医だった人で、運営に買収されたらしい。
彼女をつくろうと思ってたのに忙しすぎて暇がないんだって。哀れ。

『"この車はどこまで行くんですか？"』

「"いつものスタジオ。着いたらすぐ撮影だから、衣装を受け取って着替えて。大体3時間で終わると思う。
それと、今日は1人共演者がいるから、迷惑かけんなよ"」

『"おっけー、ねえこれ見て"』

「"は?何だこれ───あ゛ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ！」

手を開いて虫のおもちゃを見せる。それにしてもすごい声。リアクションが良いからほんとに飽きない。

『"ふははは"』

「"運転中だッッつってんだろクソガキ！！大人しく座っとけ！！！！！！」

エリック side

大人3人に無理矢理連れて来られたAは、今にも泣き出してしまいそうな顔をして、丸椅子に縮こまり、目を合わせんと俯き座っていた。

「"Aは──────"」

電話で彼女の過去を聞いた時、気管が詰まったかのように、苦しくなり言葉を発せなくなった。驚き、悲しさなどでは無い。あまりに聞き慣れない言葉がポンポンと聞こえてくるこの衝撃。
5歳で家族の最期を見、10年虐待されていた…?

目の前に俯き座るAの顔を覗き込む。怯えて揺れる眼と目が合った。意外にも、その奥には知的な輝き、怯んでしまいそうな程の熱が灯っている。

「"…俺はエリック。今日から君の専属医師となった。

ちなみに、俺は裏切らないし、来いと言われたら犬のように駆けつけるからな。執拗いというクレームは受け付けない"」

あの日から早1年。
今やすっかりクソガキになりやがった。

連日の超ハードスケジュールに流石に疲れを感じたのか、後部座席で、窓に頭を擦り付け眠るクソガキをミラーで確認する。

眠り力が入っていない手から滑り出した虫の玩具が視界にチラ、と映った。

まあ、あれくらい煩いのがが丁度いいのだけれども。

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