愛してるよ、いつまでも ページ2
日々のヤク使用による震えを抑えながら、いつの物かも分からない新聞を破り、妹の住所を書く。
ロクな人生じゃなかった、と今になり思う。
親父はドラッグの売人、母は組織の男共を相手する娼婦。俺も当たり前のようにドラッグに染った。刑務所に入ったのが転機となり、価値観を広げようと貧乏旅行に出た。
旅中に出会った日本から来たとかいう女性に惚れ、フランスに帰ったのはいいものの、昔の仲間に出くわした。
人間は、いつまでも変わらない、変われない。
ドラッグから俺はまだ抜け出せておらず、身体があの朦朧とした幸せを求めていた。家に帰り酒を求め物にあたった。
そして抗争に巻き込まれ、このザマ。
こんなどうしようもない俺でも。家族を、愛していた。ボスが家族を襲撃すると告知した時、なぶり殺されるくらいなら、せめて自分の手で、と思った。
目を合わせないよう息子達の胸に銃を当て、放つ。苦悶を浮かべる彼らに、パパもすぐいく、と涙ながら囁く。
最後はあの子か、と立ち上がる。寝室から首を傾げ歩いてきたAの、澄んだ緑の眼を見た。眼が合った瞬間、無理だ、殺せないと感じた。
小さな手に、紙を渡す。
周りには言えなかった、俺の夢と共に。
丸い、小さな頭にキスを落とした。
男共に、頭を掴まれ、床に押さえ付けられる。小さな後ろ姿を目で追っていると、Aは振り返り、なんで来ないんだろう、と思っているのだろうか、不思議そうに見た。
そして窓から外へ、消えていく。
妹の住所を書き、ここへ行けとも書いた。俺に似ず、聡いあの子の事だ、きっと誰かに聞くのだろう。
ああ、可愛い、俺の宝物。
生き延びてくれ。生きてくれさえすれば。
あわよくば、誰よりも幸せに。
どうか神様、あの子を守って下さい。
天使よ、あの子を、愛して下さい。
愛してるよ、いつまでも。
男が、引き金を引いた。
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テヤンデェ黙っとれおんどりゃあ(プロフ) - コバさん» ゥ゛ゥ゛ウ゛(振動)コメントありがとうございます😭アイラブユーです (1月13日 21時) (レス) id: b537d61366 (このIDを非表示/違反報告)
コバ - 一言で言うと好きです、、 (1月13日 19時) (レス) id: e88cbb1189 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テヤンデェ黙っとれおんどりゃあ | 作成日時:2024年1月7日 13時