【WT】硝子の靴は捨てた (ページ7)

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パンドラの箱ページ7

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最上が死んでから2年後。最上の黒(ブラック)トリガー"風刃"の争奪戦が行われることが決定した。風刃の使用者は決まっておらず、黒(ブラック)トリガーでは珍しく20人以上の適合者がいた。それは最上が多くの人に慕われた故にだろう。

「おめでとう迅くん」
「まだ勝ってないけど」
「迅くんが勝つでしょ」

蓮月の言葉に返事はせず、迅はへらりと笑みしか浮かべなかった。
風刃争奪戦には迅は選ばれたが、蓮月は選ばれることはなかった。同じ未来予知のサイドエフェクトを持っていて最上に拾われた子というのに。

争奪戦の日。
多くの人の適合者と争奪戦を観に見学者が集まっていた。蓮月は林藤や忍田と一緒に観客席から争奪戦を眺める。そして争奪戦が始まると、迅が圧倒的な力を見せつけて勝ち残ったのだ。

「林藤さん。私と迅くんって何が違うんだろうね」

蓮月は城戸から風刃を愛おしそうに受け取る迅の姿に独り言のように呟やいた。その瞳にはどろりと泥のように澱んでいる。林藤は何て答えるか迷った。こんな時、最上さんなら何て返していたのだろうか。考えたとこでその本人はいない。

「迅くんにおめでとうって言ってくんね」

蓮月は立ち上がって迅の元へ向かう。迅は蓮月が来た途端、嬉しそうな顔で両手を広げていた。蓮月はそれに飛び込むように迅に抱きつく。そして迅は戦いで昂ぶった熱を抑えるように蓮月の唇に噛み付いていた。林藤たちは勿論、他の隊員も突然のことに驚くが、二人は周りに気にせずにまるで恋人同士のように見つめ合っていた。深く。濁った。執着な眼差しで。

そんな奇妙な光景に林藤や忍田は顔の血が引いた。

最上宗一はパンドラの箱を置土産として置いた。

▼▽▽

ボーダー基地ラウンジにて。
争奪戦を観戦していたとあるB級隊員の記録(ログ)。

凄かったです。
ただその一言しかあの戦いには出ませんよ。
迅さんが強いのは知ってましたけど、それでも今回の争奪戦の候補者No.1の井口さんもいたんですよ？乱戦もあって幾らサイドエフェクトがあるからって無理だろうなぁと思ったら迅さん圧倒的に優勝。
ほら、凄かったですの一言しかないでしょ？

……あれ！迅さんと蓮月さんのキス！あれはびっくりしたで済ましていいのか……？
急に何するかと思ったらキスですよ。そりゃあ声も出なかった。それなのにあの二人いつも通りに話すよ、あれは二人の挨拶かもしれないって外国脳になりました。

あの二人は謎