【WT】硝子の靴は捨てた (ページ18)

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何でも良いかページ18

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ガチャリと扉が開く音。そして扉から差し込む光が眩しくて目が覚めた。誰だろう、と身体を起こすと同時に抱き締められた。

「A。A……っ」

声を聞き、部屋に来たのが迅くんだと分かった。震えた声で迅くんは何度も私の名前を呼ぶ。どうしたの？と聞き返して私は迅くんの頭を撫でると落ち着いてきたのか。迅くんはゆっくりと話し出した。

「Aが死ぬ、み、らい視た」

それを聞き、私はなるほどねとあっさりと返す。そして黒(ブラック)トリガーになってた？と聞くと迅くんは首を振っている。

「死ぬなら黒(ブラック)トリガーになって死にたいな」
「ば、かなこと言うなよ」
「ごめん。じゃあさ、その未来って私が誰か救けて死ぬ未来？」

迅くんは黙ったまま何を言わない。どうやら当たっているらしい。良かった、誰か救けて死ぬなら万々歳だ。

「A。お願いだから次の遠征行かないでくれ」
「死んじゃうから？その願いなら聞かないよ。私が行って救える命あるならそっちの方がいいでしょ」
「だめだ。お前が死んだらおれは、」
「迅くん」

名前を呼んだ。迅くんは顔を上げると、今にも泣きそうな子どもみたいな顔をしていた。昔からそうだ。迅くんは私の神さまみたいに救けようとしてくれる。それは私の生き様に対しての同情か。それとも未来予知から生まれた善意か。

「教えてくれてありがとう。あとは私が何とかするから」

まぁ、何でも良いか。どうせもうすぐ死ぬのだから。

▼▽▼

迅悠一は蓮月Aに恋してた。
初めて彼女と出会った時は自分と同じような境遇で、只々救けたいっていう一心しかなかった。だけど彼女は自ら選んで茨の道へと進んで傷ついていく。そして彼女は自分の力で新しい未来を切り開いた。迅はそんな彼女にいつの間にか恋してた。

迅悠一の未来予知と蓮月Aの千里眼の違いといえば、可能性のある多くの未来が視えるか視えないかだけだ。迅悠一は前者で沢山の未来のなか善い未来の為に行動している。しかし選んだ未来のなかには救われない人間もいる。

今回視えた未来もそうだ。
つい最近までは蓮月だけが生き残ってそれ以外の隊員たちが死んでいた。どの未来線でも蓮月以外の隊員は死んでいた。だが、蓮月はそれを変えた。蓮月が隊員を救ける事で他の隊員は生き残り蓮月だけ死んだ。

これ以上大切な人は失いたくない。
彼女を救うために迅は一つの可能性の未来に進む。