最期の作品(DK) ページ29
夢であって欲しかった。
どうせ、会えないと思っていたから。
それでも彼らは私を見つけたんだ。
ハンソルくんに見つかった時、喜びと切なさの入り交じったよく分からない感情が私の中を駆け巡り
胸を締め付けた。
日本に戻って来て早二年。
エスとして少ないけれども、それなりに仕事をこなしてはいただろう。
やっと安定して仕事も収入も入ってきたと思った矢先のこと。
三ヶ月前、撮影中に酷い頭痛に襲われた私は現場で倒れた。
その時は減量期というのもあって、重度の貧血だろうと診断され家に帰された。
しかしその後から、元々持っていた偏頭痛が酷くなった。
朝方なんて特に酷くなり、普段の生活において吐き気が止まらなくなったり。
決定打となったのは、全く消えない手足の痺れ。
『こりゃ、やばいな…。』
嫌な予感がして、すぐマネージャーに連絡し病院で診断を受けるとデカい病院に行けと回されること二回。
診断結果は中枢神経系原発悪性リンパ腫、癌だった。
最初聞いた時は信じられなかったし、笑いしか浮かんでこなかった。
『腫瘍の位置も、運が悪く血管が多い部分に囲われている位置になってまして全摘出は難しいかと。それと…。』
『それと?』
『ほぼ確実に、再発致します。』
かなり進行していること、位置が悪かったこと、そして長い闘病生活を経ても完治はしないこと。
そう告げられた様なものだった。
『それでもきちんと治療すれば5年生存率も高まってきていまして…』
『でも、演技はもう出来ないんですよね?』
『…瀬木、お前まさか!』
『私の生きる理由は演技があるから。演技を取られて生き永らえても、私には死よりも残酷だよ。』
信じられない、とマネージャーと医者から目で訴えられる。
叶うならギリギリまで触れていたい。
私の顔が、演技が、世界が醜くなる前に。
『……本当に、後悔しませんか?』
『後悔しかない人生なんで、今更何を後悔しろと言うんですかね?』
不思議な方ですねと医者が、呆れから来るであろう苦笑を浮かべる。
医者の矜持というものが私にもあるので投薬治療だけでもさせてもらいますと、ビビるほどの薬を出された。
そして現在に至る。
数分前から起きてはいるが目を開けるタイミングを完全に失った私は誰かの膝の上で寝ている状態だ。
「セギさん、ほら起きて。」
肩を叩かれて目を開けるとすぐ傍にはソクミンさんの優しげな笑顔が。
ふわ、と香る優しげな香りが鼻腔を擽った。
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ぴ(プロフ) - 最高でした… (2月29日 6時) (レス) @page50 id: 9dcff58a0e (このIDを非表示/違反報告)
恋@眼鏡(プロフ) - jsmn579733371さん» ありがとうございます〜!顔が好みすぎてお亮さん拝借しました笑 (2020年4月12日 0時) (レス) id: a273382bf7 (このIDを非表示/違反報告)
jsmn579733371(プロフ) - 主演俳優枠が吉沢亮なのがツボすぎて! (2020年2月20日 2時) (レス) id: bc3a6c1f44 (このIDを非表示/違反報告)
恋@眼鏡(プロフ) - かとれあさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しい限りでございます泣 これからも頑張りますね! (2020年2月18日 21時) (レス) id: a273382bf7 (このIDを非表示/違反報告)
かとれあ(プロフ) - やさぐれ姉さん大好きです(*´˘`*) (2020年1月27日 5時) (レス) id: 3fa9c6cc95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:恋@眼鏡 | 作者ホームページ:http://sukinaharahasakuradeui
作成日時:2019年9月22日 8時