「55話だよ。惚れんなよ。」 ページ7
控え室に戻るとそこには満身創痍の先輩方が転がっていた。
その様はまさに、死屍累々。
「課題は体力、かしら…？」
「リコ先輩リコ先輩。」
俺はリコ先輩の腕をちょいちょいと引き、廊下に連れ出す。
不思議そうな顔をしながらこっちを見てくるリコ先輩はきっと覚えていないんだろう。
「勝ったらご褒美に、ほっぺにチューしてくれるんですよね？」
「……あぁ！！え、あんたアレ覚えてたの！？」
「俺ちゃんと言ったじゃないですか？��本気で待ってる��って。」
ニヤリと笑いながら一歩リコ先輩に詰め寄ると1歩退かれる。
さらにもう一歩、一歩とお互い一進一退を続ける。
拉致があかない。
「……あーあ、俺頑張ったのになぁ！正邦戦も秀徳戦も結構頑張ってたのになぁ！」
大声で言い放つとウグッ…という声が聞こえてくる。
「分かったわよ…。」
はぁ、とため息をつかれる。
してあげるから来なさいよ と手招きをされる。
だけど何処と無く腑に落ちない。
「えー、なんか渋々って感じ。」
「当たり前でしょ、渋々なんだから。」
「………。」
無理矢理させている感じが、気に食わない。
こんなにイケメンなのに靡かないリコ先輩にじゃない。
けど、頬にキスをする事が不本意であるとこんなにも分かり易く伝えられると胸が締め付けられる。
はっきり言ってしまえば、つらい。
何でだろうな、って気付かないふりをした。
「リコ先輩、自分でしてあげるって言ったくせに渋々とか酷くねぇ？」
「だって、まさか本気にしてるとは思わないじゃない。」
すみませんね、そのまさかで。
「いいっすよもう…。いつかリコ先輩の方から俺のほっぺにチューしたいって言わせてみせますから。」
「絶対言わないわよ！ほら控え室戻る！」
スタスタと歩きだすリコ先輩の後ろ姿を追い掛けるように走り出そうとした所で足を止めた。
「お、カントク。東海林と二人してどこ行ってたんだ？」
「いやちょっとね。」
日向先輩が探しに来てリコ先輩と話していたから。
「火神を誰が運ぶかジャンケンで決めようとしてたのに東海林居ねぇからよ。」
「あら、そうだったの？」
そして二人で戻って行く。
「……ははっ、なんだよ。」
薄く、小さく笑った。
締め付ける胸の痛みなんて知らない振りをして笑ってやった。
「…勝てっこねぇよなぁ……。俺みたいな半端者が、さ。」
ポケットの奥に隠してたレモンのキャンディを口に放り投げる。
塩辛い味がした。
「56話だよ。惚れんなよ。」→←「54話だよ。惚れんなよ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恋＠眼鏡(プロフ) - 可也さん» ありがとうございます！！拙い作品ではございますが頑張っていこうと思います！ (2019年5月28日 20時) (
レス) id: a273382bf7 (このIDを非表示/違反報告)
可也 - とても面白かったです！！！続き楽しみにしてます！！！ (2019年5月27日 19時) (レス) id: 430d859c05 (このIDを非表示/違反報告)
恋＠眼鏡(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます。灰崎くんの小説も機会があれば挑戦してみたいと思います！ (2019年4月28日 17時) (レス) id: a273382bf7 (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月13日 15時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：恋＠眼鏡 | 作者ホームページ：http://sukinaharahasakuradeui
作成日時：2018年11月21日 8時
