ファイル62:バンガイ ワン ページ12
『ルチアーノー...、話聞いてるー？』
「あ、ああ、勿論...」
やぁ、どうも。Aだ。
今回なんと、なんとな。
私達に新コスチュームが追加されたんだ。嬉しい。
だがしかし！私たちは今！今！寝台に縛り付けられている！
しかも！立たされて！
「...残り三十分、か」
『そうだな...、はぁ...誰か迷い込んでこないものか』
「迷い込んでくるやつなんていないだろう。あんな薄気味悪い所に好んで入る奴がいるのか」
『マルコスあたりなんてどうだ』
「...否定はできないな」
はは、と乾いた笑いを溢すルチアーノは暖かみがある。
「うわぁ、どうしたのそのセット」
『おお、マルコスか。...いや、マルコスか』
「ねぇ、今Aちゃん絶対にさ、必死に驚きを隠してたよね。僕そんなに影薄かったかな。さっきからいたんだけど」
「いたか」
『...いたのか...な、いや、い、いいい、いたさ。私は気づいていた』
ばっりばり嘘だ。
本当はいたのも知らないし。だから出てきた時は相当吃驚。
うわぁ、ものすごい疑われてる。いやいや、疑われてるじゃない。白い目で見られている。疑いがきっと確信に変わったんだろう。
『いや、ほんとに...わ、わるかっ...ー！』
なんだこれ、ええ？なんだよ。なんなんだよ。
チョコみたいなドロドロした茶色い液体が...いやチョコだ。
チョコだ。
...念の為もう一度言うぞ。
チョコだ。
普通体にチョコかけるか？チョコバナナならぬチョコAか。
私を食べての域越してるだろ。もうこれ私を食べる前に私を拭いてだろ。
「お、おい...お前、チョコに気を取られるのもいいが装備も変わったな」
「あー、白いところが黒くなってるね。僕そっちも好きだなぁ」
『あ、あ.....ぁ』
不思議とベタベタしないのが無駄に腹立つ。
いやいやいや、私そこまで短気じゃない。
違うんだ、今は現状を理解するのにしばしば時間がかかっているだけでだな。少し頭が混乱して物に当たってるだけなんだ。
...ほんと。違うんだ。
『...もう私外に出たくない。見られたくない。なぁマルコス。頼む、気配を消す方法を教えてくれ。頼む』
「...残念だったな。もう残り五分切ったぞ」
「いや僕気配消してるつもり無かったんだけど...」
『なんだ、そうか。私には…つまり、死ねと』
もう今の私には、再起動した時に周りにみんながいないことを願うことしか残されていない。
「...残り三十秒、だ」
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作者名：ゴースター | 作成日時：2018年1月31日 1時
