【 ky 】 最 後 く ら い は 華 や か に 。【 男主 】

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『…』

買い物も終わり、袋を下げて家へと向かっていたその時

「あの…」

声をかけられた

『はい？』

「あの、薬局に行くにはどう行ったらいいんですかね…」

『…ああ、薬局…。薬局はその信号を右に曲がったところにありますよ』

「ありがとうございます」

話しかけてきたのはおばあちゃん。
腰も曲がって背がちっちゃくなっていた

…俺も将来はあんな風なじいちゃんになるんかなぁ
そんなことを呑気に考えながらまた家へと歩を進める

あのおばあちゃん可愛かったな、ニコニコしててめっちゃ癒された。
気分も良くなり笑顔で帰宅
あんな小さなことが何故か物凄く嬉しく感じてしまう
外に出ることも大事やな

部屋に入り冷蔵庫に食材、食器棚に麦茶の袋をなおした。

今日は平和な一日になるかもしれへん

そう思っていたのもつかの間

チャイムが鳴った。

足音を立てず、静かにモニターを見てみるとまたあの時の女の人

チャイムを連打して、扉を強く叩く

「イノくーん！！居るよね？さっき帰ってきたもんね！いるなら開けてよ！」

そんなことを言いながら強く叩いてくる

さっきまでいい気分だったのに、と機嫌を悪くし玄関へ向かう
チェーンをつけて扉を開けた

『やかましいねん！！迷惑やぞお前！』

「あ、イノくんやっぱり居た！
あのね、イノくんの為にクッキー作ったんだ、アイシングクッキーでね、可愛くデコれたの！」

こいつは話聞く気なし。
…前の家からほんまに懲りずに特定してくるわな…
こいつは前のやつとは違うんやろうけど

『俺プレゼントとか貰われへんねん、人が作ったやつ基本食べれへんねん』

「そうなんだ！初めて知った！少し潔癖症なのかなぁ、でもまぁいいや！受け取るだけ受け取って！」

いややっぱり聞いてへんやん
俺がさっき言ったのはあながち間違いではない
人が作ったものは食べきれる
けど、おにぎりを素手で。ハンバーグを素手で。
みたいに素手でされるのが嫌なだけ

ほんまはクッキーとか食べれるんやで
ただ俺は要らんねん。

『受け取らへん、さよなら』

そう言って確認し思いっきり扉を閉めて鍵をかけた
外で女がうるさい。
俺はついでに透明の幅広いテープを玄関ポストへ貼り付けた
あいつが帰るまでは貼っとこう
何入れるかわからん

「あーけーてー！！！」

外で女が叫ぶ

ああ

苦しい

早く帰ってくれ

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