密室、暗闇、二人きり。【そ.ら.る】 (ページ5)

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「…………」

「……………」

気まずい。当たり前である。出会ってまだ30分も経ってない、イケメンなのだから。

しかし私には分かる。この状況は、私が話さないといけない状況であるということ。

暗い所が苦手ってことは、暗所恐怖症とか、そういうのなんだろう。
私はそうじゃないし詳しくないけど、名前だけ。知ってる。

そうじゃなくとも、苦手な所にいるのにペラペラ話せる人なんていない。ぶっちゃけ私だってこの暗さは少し怖い。

だから適度に話そう。そうしよう。私に出来ることはそれだけだ。

「…お名前」

「……はい…？」

「お名前、聞いてもいいですか？」

いや敬語下手か私。訂正、適度に話すだなんて器用なことは出来ませんごめんなさい。

イケメン相手に緊張してるアンド、国語が苦手。ついでに、コミュ力は低め。

…フライドポテト持ってきたのが私でごめんなさい……。

「…そらる」

「？」

「っていう名義で仕事してるんですけど、ご存知ないですか？」

「…そらる、さん」

「はい」

教えられた名前を復唱すると、思い出されたのは、高校時代の友達の言葉。

『A！そらるさんのライブダメだった！！』

『ああああそらるさんすき……A今日空いてる？一緒にCD買いにいこーよ』

『ねえねえ！新曲聞いた？ほんっとイケボなんだけど…そらるさんと結婚したい』

『それな？？？？？』

「………そらるさん？」

それは、二人いた仲良しの友達が二人とも好きで、飽きるほど聞かされた名前だった。