密室、暗闇、二人きり。【そ.ら.る】 (ページ30)

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「…………うそん………」

生まれて初めて人を好きになった。

そのことを自覚した19歳、夏の終わりの某日午前0時半。

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「あれ？なんかげっそりしてない？」

「……そらるさん…こんにちは」

昨日の今日で貴方来ちゃうんですか。そう思えど口には出せない。

あれから柄にもなく心が浮ついて眠る気になれなくて、ネットで少女漫画購入して読み始めたら止まらなくなってこの有様。

今日も今日とて彼は美しい。しかし今は目に毒だ。平日だからと油断していたのもあるけど。

「珍しいですね」

「仕事が思ったより早くキリがついたの。
だからAさんに会いに行くついでに歌おうかなーって」

ふわり…背後に白い薔薇が舞ったように見えて慌てて目を擦った。二度見もした。薔薇は無かった代わりにそらるさんが慌てていた。

いや今までも彼がイケメン過ぎて情緒不安定にはなっていたけど、まさか幻覚まで見えるなんて。恋とは末恐ろしい。

カラオケ来るのに歌うのがついでって……私に会いに来るついでって………これにときめかない女子いないでしょふざけないで………！！

目を抑えながらカウンターに頭を叩きつけると本格的にそらるさんが私を宥める。

「今日のAさん変だよ…？寝不足？」

「いえ通常運転です」

「そう言われればそうかもしれないけど拍車をかけておかしいと思うんだ」

寝不足？ほんと寝なきゃだめだよ？そう心配そうに言ってくれる彼に、初恋の相手が敵わなさそうで嘆いてるんですとは言えず。

通常運転ですと言い張るしかなかった。