密室、暗闇、二人きり。【そ.ら.る】 (ページ26)

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怖かった？と聞かれればそんなことはなかったなと思い、そう答えた。

そしたら次に、じゃあどうしてあんな顔してたの？と言われた。……あんな顔？

「あんな顔ってどんな顔ですか？」

「形容しがたい顔してたね。変な顔だった」

「…強いて言うなら気持ち悪かったですね」

怖くなかったのに、気持ち悪かったの？とそらるさんは不思議そうにくすりと笑った。

あ、その笑い方、落ち着く。

思わず肩の力が抜ける。

.

過保護なことにレジまで送ってくれたそらるさんに、私はぺこりとお辞儀した。

「ありがとうございました」

「あーゆーのは急所でも殴っときな」

「そらるさん、私一応店員なんですけど忘れてませんか」

「業務妨害だよ。正当正当」

そんな会話をしていた時に、先程のチャラ男2人が店から出て行くのが見えた。

興ざめだ、と言わんばかりに帰っていくようだった。

ばちりと彼らと目が合って、慌てて逸らした時、
そらるさんが私の手を引いた。

私は彼の方に倒れ込んで、

それをそらるさんが受け止める。

いわばハグというやつだった。

「～～～！！！！？！？」

「じゃあね、A。お仕事頑張って」

ぎゅーーーー。時間でいえば僅かなものだったと思う。
けれど長く感じた。そらるさんの体温が。声が。近くて、初めてのハグにしては刺激が強すぎて。

うわ、絶対これ心臓の音聞こえてるよ、恥ずかしい。

.

そらるさんが離れた時には、あの男二人はいなくなっていた。

「これでもうあいつらはAさんにちょっかいかけられないね」

ケロリとした顔で彼は言った。

そして「よかった、その顔なら俺は気持ち悪くなかったんだね」と、にこ、と口角を上げて笑った。

見なくてもわかる。

そらるさんの言う“その顔”というのは、
林檎のように真っ赤になって驚く顔だってこと。