密室、暗闇、二人きり。【そ.ら.る】 (ページ21)

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あれから一週間、二週間と月日が流れてもそらるさんは来なかった。

もう来ないんじゃないかとも思った。歌い手というお仕事は私が思っている以上に忙しいのかな、と。

そもそもそらるさんはここの常連じゃない。あれが初めてだったわけだし。

またこうしてイケメンのいないつまらないバイト生活を過ごしていく。

いいんだけどね、先輩も店長もみんな優しいし。

…いいんだけどね。

残り時間をインターホンで伝え、受話器を元に戻して落ち込む。

その時ふと視線を感じた。

はっ！としてレジの方を向けばホストのような髪型とマスクを着けたお兄さん。

き、気づかなかった…いつからそこに……

というかそこにベル置いてあるんで押してくださいお兄さん……？？？

「すみません、いらっしゃいませ」

「あの…Aさんですか？」

「…えっ？？」

思わずお兄さんの顔を二度見。

…？？私こんなホストみたいな知り合いいないんだけどどちらさま？？？

マスクをしているし直線のように下ろされた彼の茶色い前髪は長く、顔はほとんど見えないのだけれど、とりあえず知らない。こんな人知らない。

はてなマークをいっぱい頭の上にくっつけていると、彼の背後のドアが開いて男の人が入ってきた。

二週間ぶりに見るその人には見覚えがあった。

「そ、そらるさん…！？」

「久しぶりAさん」

「お、ひさしぶりです……」

「これ、俺の相方のまふまふ」

「あっそうだったんですか、はじめまして」

「はじめまして～」

男の人にしては高めの声で、彼は目を細めて笑った。