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Aside
泣きながら東京の街を歩いていると前から歩いてくる飲み会終わりのスーツ姿の男性にぶつかった、その拍子にバックから資料が道路に散らばる
資料に雨が染み込んでいく、男性も通りすがりの人も気づいてるのに気づかないふりをして私の存在が消えたみたいに通り過ぎていく
東京の街っぽいなとか思いながらも涙は止まらなかった、一人で散らばった資料を集めていると目の端に誰かが立ち止まったのが見えた
その人は私と一緒に資料を拾ってくれた、「おねーさん、大丈夫?」そう少し掠れた声に顔を上げると細いのに男らしい男性が私を見つめていた
あ「大丈夫です」
咄嗟に笑って言ったけれどきっとみっともないほど泣いていただろうし声も震えていたと思う、だから私は手渡された資料をすぐに受け取った
あ「すいません、ありがとうございました」
そう頭を下げ踵を返そうとすると「ちょっと待って」という男性の声で呼び止められる、驚いて振り向くと男性は駆け足でこちらへと向かってくる
樹「足、怪我してるっしょ」
私の足を指差してそう言う、言われるまで痛みもしなかったけれど膝はすりむけ血が出ているしかかとはヒールのせいか靴擦れしていた
あ「これくらい平気です」
強がってみせたけど本当は誰かに助けてほしかったし話を聞いてほしかった、すると突然男性は何も言わず私の前にしゃがんだ
樹「背中、乗って」
あ「いや、悪いですしお兄さん折れちゃう」
樹「んはっ、そんな簡単に折れないよ笑」
あ「…じゃあお言葉に甘えて失礼します」
軽々しく私を持ち上げて歩き出したお兄さんは「全然重くないじゃん、ちゃんと食ってる?」ってさっきと同じように目尻にシワを寄せて笑う
樹「おねーさん、名前は?」
あ「成瀬Aです、お兄さんは?」
樹「俺は田中じゅり、樹木の樹でじゅり」
あ「樹さん、かっこいい名前ですね」
樹「Aちゃんも、可愛い名前だよ」
樹さんの背中は暖かくて優しかった、首元からふわっと香る香水の匂いと樹さんの少しかすれた優しい声が傷ついた今の私にはちょうどよかった
樹「っし、コンビニ着いた」
あ「え?」
樹「雨でびしょびしょだしさみぃしなんか温まるもんでも食おうよ」
俺買ってくるからベンチで待ってて、と私を優しくベンチにおろしてくれてコンビニの中へと入っていく樹さんの横顔はとっても綺麗だった
樹「ん、半分こっつな」
あとこれもって絆創膏を私の足に丁寧に貼ってくれた樹さん、誰かと二人で肉まんとあんまんを半分にして食べるなんて高校ぶりだったと思う
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作者名:ゆっぴー | 作成日時:2023年12月10日 21時