奇皇后 Ⅲ ～story of Tal Tal～ (ページ42)

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142.すれ違いページ42

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ヘ「…タルタル様は、急にどうなさったのでしょう？」

ヘスが淹れてくれたお茶にも手をつけず考え込む私を見て、彼女は遠慮がちにそう呟いた。

「…分からないわ、」

タルタル様がなぜ急にあのようなことを仰ったのか、私には検討もつかなかった。

これまで決して、私の行動を縛り付けたりはしなかったのに……。

へ「何か、気がかりなことがあるご様子でした。」

さきほどのタルタル様を思い返すように、口元に手を当てるヘス。

「…タルタル様が戻られてから、直接お聞きする他ないわね。」

数刻後、日が沈んだ頃にタルタル様はお戻りになられた。

「…Aでございます。」

外から声をかければ、中から "入れ" という声が聞こえてきた。

「しばし、お時間いただけますか。」

タルタル様は書信に向けていた視線を私に向けると、どことなく居心地悪そうに立ち上がった。

タル「…座れ。」

「…失礼します。」

持参したお茶を湯のみに入れ、タルタル様に差し出す。

タル「…私に、聞きたいことがあるようだな、」

お茶を一口飲んだタルタル様は、静かにそうきり出した。

「昼間のことです。」

タル「………。」

「なぜあのようなことを？
私が、何かお気に障るようなことでも？」

タル「そういうわけではない。」

「ではなぜ……、何があったのです。」

タル「…何でもない。お前が気にするようなことではない。」

タルタル様は思い詰めたようにそう呟くと、私からふっと目を逸らした。

「他でもない私自身のことです。」

タル「A、」

「理由を教えてくださらないのなら、ご命令を取り消してくださいませ。」

タル「…それはできぬ。」

「タルタル様……！」

タル「………。」

頑として姿勢を変えようとしないタルタル様を見て、私は部屋を出ようと立ち上がり、彼に背を向けた。

「…私はタルタル様にお仕えする奴婢ですが……」

タル「………、」

「…あなた様の所有物(もの)ではありません。」

そう言い残して、部屋を後にした。

その瞬間、タルタル様がどんな表情をしていたか、怖くて後ろを振り向けなかった。