気象系歌物語 (ページ21)

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hit the floor 10 ページ21

僕の心なかで、とめらない感情がわきあがっていく。

それが…何なのかはよくわからない。

でも……たまらなく切ない。
今切ない思いをしているのは、きっと彼女の方なのに…

なんだか、僕の胸がはりさけそうだ。

君にこんな顔をさせる…その、旦那さんに怒りをおぼえる。

『ねぇ……』

突然僕が発した低い声に驚いて、彼女がぱっと僕を見る。

泡の消えそうなグラスを片手でよけて……

僕は彼女の唇に自分のそれを近づけた───

「え……」

半ば放心状態で僕を見つめる君。

……当たり前だ。キスをした当の本人だって今の状況をよくわかっていないのだから。

「あの……」
彼女の声ではっと我にかえる。

『っ、すみません…！僕今……』
「…やだ……」
『え？』

彼女の目に浮かんだ涙。

「…謝らないで……」
『……』
「…もっかい……」
『は？』
「もっかい、キスして………」

──え？…なんなんだこの急展開……。

……不安そうに僕を見つめる君。
そんなに潤んだ瞳で見つめられたら──

…誰かに気づかれる前に、……君を手に入れたい。

そんないけない欲望が脳内を支配する。

カウンターを出て、彼女の隣の椅子をよけ…

彼女の髪をそっとよける。

僕は…ゆっくりと顔を近づけて……唇に柔らかくて優しい温もりを感じた。