気象系歌物語 (ページ19)

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hit the floor 8 ページ19

「私ね…旦那がいるんですけど……」

ちらっと指輪を見せて、彼女は話を始めた。

「昨日…クビになったんです…会社。」
『え…困りましたね。』
「そう。しかも三回目。」
『三回目………』
「ね…もう大変な旦那なんですよ……」

彼女はそう言って、ため息と共に苦笑いをする。

「彼…ちょっと責めると、だれのおかげで生活してると思ってるんだ、って言うんです…」
『へぇ…』

なにが…へぇ……だ。気のきいた返事ひとつもできない自分に腹がたつ。

「もう…別に彼のこと…好きじゃないんですけどね。」
『……』
「彼も…多分私のこと……」
『……』
「それで、昨日…店員さんから渡してもらった腕時計の話になるんですけど……」
『あぁ、あれ…』
「あれ、付き合い始めた頃に彼から貰ったもので…」
『そうだったんですか……』

そうだったのか…。大事なものだ……と言って両手でぎゅっと腕時計を握っていた理由がなんとなくわかった。

「私の誕生日にね…彼の家に行ったんですけど…彼、私が家を出る最後の最後までなんにもいってくれなくて…」
『……』
「誕生日…覚えてなかったのかなって思って、家を出たんです……」
『え…』