気象系歌物語 (ページ16)

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hit the floor 5 ページ16

ずっと頭をさげている彼女。

なかなか頭をあげようとしない。

『え…そんな、僕は忘れ物を届けただけですよ(笑)』
僕の声に彼女がぱっと顔をあげる。

その顔には………

『え……』
「っ、ごめんなさい…」

暗くて顔はよく見えないけれど、震えている声。
路上で急に泣き出してしまった彼女を前に、僕は立ちすくむ。

「ごめんなさい…うぅ…」
『いや…構いませんよ…』

心なしか…道を行く人たちの視線が…痛い。

「…っふ……」
車が横を通りすぎて、一瞬、周りが明るくなる。彼女の顔が見えた。

店で見たときよりも、とても頼りなくて、幼いような印象を受ける。
なんだかこのまま消えてしまいそうで……

──守りたい、そう思った。

守りたい……て、なに考えてるんだろう//
何気なく彼女の指に目をやると、きらっと光る指輪。
…ほら、旦那さん……いるじゃん……

少し早くなった鼓動を無視して、目の前で泣いている彼女を落ち着かせなければ、と口を開いた。
『あの───』
「っごめんなさい、ほんと、すみませんでした…！」
『あっ…』

でも、僕が言葉を発する前に、信号がまた、青になり…彼女は横断歩道をかけていってしまった。