気象系歌物語 (ページ15)

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hit the floor 4 ページ15

腕時計は、彼女が店を出るときに忘れていったもののようだ。

時刻は12時…もう閉店の時間だ。
今追いかければ、間に合うかも知れない。

届けるなら早いほうがいいだろう。
そう思ってすぐに店を出る。

……冷たい空気。
息をする度に肺まで冷えてしまいそうだ。

もう夜遅いというのに、明るい街と人の群れ。

見渡すと、少し離れた信号で彼女を見つけた。

『あの…！』
「………」

声が届かない。信号が青にかわる。

『ちょ…すいません、お客さん！』

とっさに走って腕をつかむと、驚いて振り向いた彼女。

「え…どうしたんですか。」
『あの…これ…』

冷気に触れ、少し冷たくなった腕時計を見せる。

「あ…」

彼女の表情が、少し明るくなったような気がした。

「すみません、わざわざありがとうございます…これ、大事なものなんです。」

彼女はそう言って、腕時計を両手で包んだ。

「ありがとうございます…」

ぺこっと頭をさげた頭。
信号が赤にかわってしまった。