君じゃなきゃいけないこと おついち ページ7
【夢主友人設定】
社内から今にも追い出されそうな場所にある小さな部屋。生憎私の同僚のおついちと2人きり。
絡まる視線が紫煙によって遮られる。
｢Aちゃんも休憩？｣
御年36歳。
歳の割に甘く、若々しい声が2人きりの喫煙室に響く。
｢やっと明日の会議に出す企画書が終わってね｣
凝り固まった肩を揺らして自嘲すれば、ポケットに手を伸ばした。
｢あれ、煙草どこやしたんだろ…｣
ポケットに入れたはずの煙草がない。思い起こせばデスクに珈琲と一緒に置いてままにしているかもしれない。私のいる部署まではここからかなり距離があるし、時間的にも取りに帰って吸う時間は無さそうだった。
｢煙草忘れた？僕ので良かったらいる？｣
小首を傾げたおついちは緑の瞳を覗かせた。手元で覗かせた瞳と同じ色をした箱が揺れた。
"じゃぁ、お言葉に甘えて"と慣れた手つきで箱から煙草を取り出した。
｢火も借りていい？｣
煙草を咥えたまま器用に先端だけをぴょこぴょこ動かす。
｢あ〜、はいはい｣
トントンと灰を落とした吸いかけの煙草を咥えるとおついちは自然と顔を寄せた。まさか火を貸すというのはこういう事だったのか、緊張して上手く動けずに硬直したままだった。
特に気にする素振りを見せなかったおついちは煙草を先端にくっつけ、火を移した。
ジジ、と焦げる音と揺らめく煙をよく覚えてる。
風避けにしていた手を下ろすと、まだ動かない私の肩をつついた。
｢こうやって火付けるの初めてだった？ごめんね、よく知り合いの兄弟にこうしてるもんだからつい｣
ぱちくり、と丸い目を見開いて申し訳なさそうにはにかんだ。
｢あ、ううん、大丈夫｣
メンソールの爽やかな香りが鼻に通る。
なんだかおついちぽくて、ふ、と鼻で笑ってしまった。
｢おついち、今日も火貸してよ｣
｢なんでよ〜まぁ、いいけどさ｣
伏せた瞼が、長い睫毛が、スラっとした鼻筋が、少し乱れた横髪が、細い指が、白い肌が、
しんと静まった喫煙室も、目の前で揺れる紫煙も、鼻を通る冷気を孕んだような清々しさも、目の端に写ったポケットから覗く"American spirit"の赤い文字も
この瞬間の全てが
(＿＿＿綺麗)
【END】
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朔(プロフ) - 白銀卿さん» コメントありがとうございます。曲と被ってるってなんか少し恥ずかしいですね(笑)相変わらずの更新速度ですがよろしくお願いします。 (2017年6月8日 20時) (
レス) id: b25981f686 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - ぽむさん» コメントありがとうございます。書いた甲斐がありました！需要あるんですね(笑)ネタが溜まったら書くかも、です(笑) (2017年6月8日 20時) (レス) id: b25981f686 (このIDを非表示/違反報告)
白銀卿(プロフ) - 49日目の嘘とホントのある一文と俺の知ってる曲の一部分が重なっているように感じながら読んでました。更新お疲れ様です。次も楽しみにしてます。 (2017年6月7日 23時) (レス) id: 4697ccbf74 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - いつも読ませていただいてます！本当に素敵な作品ばかりで…三人称さんの小説は私というものに需要がありますよ笑ぜひ読みたいです^^ (2017年6月7日 22時) (レス) id: 3b5acabf2f (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - anna o-さん» そう言ってもらえて書いてて良かったって思います！中々大変な道のりでしたね、それでもあっただけラッキーですよ(笑) (2017年6月2日 11時) (レス) id: b25981f686 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔 | 作成日時：2017年5月12日 13時
