天まで伸びる竹に縋って 弟者 ページ44
【七夕企画】
〜Otozya side〜
雨、雨、雨。
七夕だってのに朝から、いや、昨晩から雨。降ってなくても曇り。
こんなんじゃ今年も織姫と彦星は会えないな、なんて彼女…じゃなく兄者と話してた。俺の言うことに相槌を打つ兄者もリビングで彼女さんとイチャついてた事を俺は知ってたから軽く肩を叩いた。
｢コンビニ行ってくる〜｣
家に居るのもいたたまれない俺はサイフと傘片手に家を出た。どうせ居たって兄者の痴態を見る羽目になる訳だし。
｢あーぁ、彼女…出来ないかな。せめて出会いがあればいいのに｣
男のサガだ。いくらゲーム好きだからって、ちょっと有名だからって欲しいものは欲しい。
どっかで笹でも買って短冊に書こうかな。そんなこんなでコンビニにつく頃には履いたジーンズがびしょ濡れるくらいには雨が降っていた。
コーラに、ポテチ、七夕だから少しデザートも。そして入口にある傘に目を止めた。ここに来る途中のタバコ屋の軒下にずぶ濡れの女の子が座り込んでるのを俺は知っていた。
(どうすっかなぁ)
そう言いながらも手にはしっかり新品の傘を持っていた。
自動販売機に寄りかかるようにして髪からはぽたぽたと雫が垂れる。生憎うずくまってて顔が見えないがカタカタと小刻みに震える小さな肩にそれどころじゃないと気を取り直す。
｢あの…、もし良かったら傘使う？女の子だし、身体冷やしたら危ないし｣
もぞりと動いた彼女。伏せていた顔を上げて俺と目線を合わせた。
｢え……っいいん、ですか｣
思わず俺は息を飲んだ。ぱっちりと見開かれた目も、赤い林檎みたいな唇も、震える肩に寄せる華奢な手も、俺の好みの具現化みたいなもんだった。運命の人に出会った時ビビッとくるのは嘘じゃないと思った。
｢七夕なのに土砂降り。傘は忘れちゃうし、友達とは喧嘩して連絡つかないし、財布も置いてきちゃったしどうしようかと思ってたの。…彦星みたい｣
冗談ぽく前髪を揺らしてふふ、と笑った。
"彦星みたい"だったらその子は俺の織姫だろう。
｢あっやば…俺友人迎えにいくからそろそろ行くね。風邪ひかないようにね、じゃぁね、織姫ちゃん｣
傘をさして元来た道を辿る。あ、連絡先聞けばよかった。なんて思ったのは随分後で、でも不思議と後悔は無かった。
何となくまた会える気がする。こんな年になって運命なんて馬鹿馬鹿しいけどたまにはいいだろ。
｢弟者くん随分と上機嫌じゃん｣
｢ん？まぁね、織姫見つけちゃったかな｣
【END】
非常に申し上げにくいのですが 兄者→←僕に叶えられますか おついち
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朔(プロフ) - 白銀卿さん» コメントありがとうございます。曲と被ってるってなんか少し恥ずかしいですね(笑)相変わらずの更新速度ですがよろしくお願いします。 (2017年6月8日 20時) (
レス) id: b25981f686 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - ぽむさん» コメントありがとうございます。書いた甲斐がありました！需要あるんですね(笑)ネタが溜まったら書くかも、です(笑) (2017年6月8日 20時) (レス) id: b25981f686 (このIDを非表示/違反報告)
白銀卿(プロフ) - 49日目の嘘とホントのある一文と俺の知ってる曲の一部分が重なっているように感じながら読んでました。更新お疲れ様です。次も楽しみにしてます。 (2017年6月7日 23時) (レス) id: 4697ccbf74 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - いつも読ませていただいてます！本当に素敵な作品ばかりで…三人称さんの小説は私というものに需要がありますよ笑ぜひ読みたいです^^ (2017年6月7日 22時) (レス) id: 3b5acabf2f (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - anna o-さん» そう言ってもらえて書いてて良かったって思います！中々大変な道のりでしたね、それでもあっただけラッキーですよ(笑) (2017年6月2日 11時) (レス) id: b25981f686 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔 | 作成日時：2017年5月12日 13時
