【2BRO.】愛の色【SS】 (ページ45)

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｢待ちつかれたよ。｣弟者ページ45

～Otozya side～

それから雨の日をまだかまだかと待った。
"雨が降ればあの子に会える。"そう思えば心が弾んである時その子に一目惚れしている俺に気づいた。名前も知らなくて、1度傘を貸しただけのその子を好きになるなんて兄者やおついちさんに言ったら笑われそうで誰にも言えないまま雨の日を待つだけだった。

でも3月の冷えた寒空は俺の願いを中々叶えてくれないらしく結局雨が降ったのは傘を貸してから3週間も経った頃だった。
といってもその日の午前中は曇りで3人で買い物に行っている途中で雨が降り出した。2人には無理を言って降ろしてもらうとあの子の後ろ姿を見つけた。

｢本当に返しに来てくれたんだ｣
急に後ろから話しかけたからか肩を揺らし驚くも俺の顔を確認すると"はい、雨が降ったんで急いで来たんです"と嬉しそうに笑った。
｢あの、お礼に何かお昼でも奢らせてください！私ご飯まだで｣
お腹を摩るとぐぅ、と音が鳴って恥ずかしそうに顔を下げた。
｢うんいいよ。俺もお腹空いたから｣
同じ様にお腹を摩る動作をすると"それじゃぁ早速行きましょ！"商店街の中のお洒落なお店に俺を連れて行ってくれた。

お店の中で俺達は色々と話をした。お互いの自己紹介じみたものもしてその子の事が分かったのはいいけど自分がする時はなんだかお見合いみたいでむず痒い。
名前をAと言った。
(A…Aさん…や、Aちゃんか…)
馬鹿みたいに心の中で何回も復唱してるうちに"弟者くん顔赤いけど大丈夫？"なんて心配そうに俺の名前を呼ぶからもっと赤くなって側にあった水を一気飲みした。
俺達は雨音を聞きながらずっと話をしてた。時計を見るともう午後3時。2時間近く話をしてる事になる。Aちゃんが"そろそろ帰らないとだね"名残惜しそうに言うから変に勘違いしそうになる。連絡先を緊張によって震える手で交換して本来の目的の傘を返してもらって俺達は別れた。

(また会えたらいいな……ってもなぁ、傘返してもらっちゃったし)

傘に垂れる雨を見つめて溜息を漏らした。