【2BRO.】愛の色【SS】 (ページ19)

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予定調和の限界弟者ページ19

【会社パロ】

｢俺…A先輩の事が＿＿＿｣

後輩の弟者くんは非の打ち所が無いような人だった。私が指揮を執る部署にやって来たのは1年前で、飲み込みは早いし、皆に気を使える、分け隔てなく優しいけど敬意はちゃんともっている、女の子が好きそうなルックスに渋い声。一時社内で話題の人になっていた。もちろんファンクラブらしきものもある。給湯室のなんたらみたいな感じでよく女の子達が話をしているのを見かける。

｢Aちゃんは弟者くんの事どう思ってる訳よ？｣
昔1度、違う部署の同僚に聞かれたことがある。と言っても私と弟者くんの仲は残業終わりにたまにお酒を飲んで帰るぐらいの仲だったから"いい人だとは思うよ"愛想笑いじみた笑顔でそう言っておいた。本当は少し気になってた。あの笑顔が私だけに向けられたら、なんて思ったこともある。でもきっと弟者くんは私の事をどうとも思ってないし、飲みに着いてきてくれるのも先輩後輩というヒエラルキーに従ってだって私は知ってる。

そんな世間渡りが上手な彼のお陰もあってか私の部署の評判はうなぎ登り、ついに私は都内中心部にある本部に務める事になった。今の会社からは5駅ぐらい離れてて元上司と元部下という関係じゃそう簡単に会えなくなってしまうから転勤の前日で部署の皆には言わなかった。しんみりしたのはあんまり好きじゃないから。
｢明日から私は本部に務める事になるから今日で皆とはさよなら。私の代わりは他の部署から来るから心配しないで。本当に楽しく仕事させてもらって良かったと思ってる、ありがとうね。｣
しんみりした別れはあんまり好きじゃなかったけど、後輩が私の名前を呼びながら花束を渡して来るもんだから涙が少し出た。

弟者:最後に飲みに行きませんか？いつもの場所で待ってます。

光る画面に映し出されたのは弟者くんからのメールで"この仕事が終わったら行くね"短く返しておいた。

それから何時もの居酒屋で何時も以上にお酒を飲んだ。これが弟者くんと飲む最後のお酒だと思うと自分が異動になる事以上に辛い気がしたから少しでも酔って寂しさを紛らわせようとした。