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後からなんで私だったの?って聞いたら、何だか運命を感じたからって頬を赤らめて言ってたな。凄く可愛らしくて、女性相手にキュンとしちゃった。まぁ師範も胸をときめかせる事は多いみたいだけれど、こう見えて私も前世は明るかったから、師範のように育っていたからというのも一理ある。……まぁ、修行を受けたのは五ヶ月間という人よりかは短い期間だけれど。
元から私には才能があったみたいで、日に日に強くなっていった。でも私は"才能"と言うものが纏わりついて、それに縋るのは嫌だと食べる暇も寝る暇もなくただ肺を使い回し、竹刀を振り続けた。
そんな時、不死川さんに止められて、そのままだと死ぬって言われたんだよな。
でもその時、"死ぬ"って言葉が何故か響いて。もし死ねたら、家族の元に行けるのではって思った。
そんな思考を読んだのか分からないが、不死川さんは私をじっと見つめて、口を開いた。
「死にてェなら、人目の付かねェ山奥で勝手に死にやがれ。……お前の親が、それを望んでるンだったらな」
「お前は努力の才能がある。お前のように自暴自棄になって死ぬ奴も多く見てきた。勿論鍛錬で死ぬ弱ェ奴も。俺は野郎共の気持ちなんて知ったこっちゃねェ。死ぬのが終わりだと思うなよ」
その時は、もう少し優しく言えないのだろうか、と思った。勿論、環境が違うからこそ不死川さんはそんな事が言えたのかも知れない。今の時代では死を望む人が多く見られるのはきっと昔より生きる、という願望が薄れてしまったり、卑怯なやり方をする人が多いのだろう。少なくとも私の周りではそんな人はいなかった。
………逃げたくても、逃げられなくて、その道を辿った人もいる。私は、その人達の道を塞ぐことはしたくない。
不死川さんは不器用だし、強面だし。……でも、本当は凄く優しくて。
環境が環境だ。私は私。逃げるなんて、絶対にしたくない。私は、私は親の仇を必ず打つと再びあの時強く誓った。
お礼を言って、師範の屋敷に帰れば暫く帰って来ていなかった私を師範は涙を流しながら心配してくれていた。
そうだ、今の私には居場所がある。……もっと、もっと強く生きなければ。不死川さんもきっと、辛い思いをしてここまで来たはずだから、私より人一倍命の重みを知っている。
それからのこと、不死川さんを見つければ声をかけることが多く、笑顔を掛けてくれることも多くなっていった。優しくて心地良くて、お兄ちゃんが居れば、あんな感じなのかな。
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にゃは(プロフ) - こんなに泣いた物語は初めてです!!応援しています!!! (1月8日 5時) (レス) @page47 id: 375689edf5 (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - 大好きです!!!!更新頑張ってください! (2021年2月28日 13時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
CAORU(プロフ) - この作品、とても面白いです。なので、続編を読みたいです!オチもあるなら気になります! (2021年1月18日 21時) (レス) id: c8c13c4b59 (このIDを非表示/違反報告)
ふわ〜♪(プロフ) - こんにちは、初コメントです♪私は、とても面白かったので、続編ができたら嬉しいです! (2020年10月12日 7時) (レス) id: f2b00d0a0d (このIDを非表示/違反報告)
ワノ(プロフ) - 嵯峨野 繆謎さん» あ、方言ですか!!「ちごうくて」ですかね??変換ミスとかかと思ってました笑すみません汗 なるほど、そういう意図があったんですね!でしたら分けずに続けて「○○、○○だったので」とかやれば不自然じゃなくなる、かも…?笑 場所によるかもですが!笑 (2020年8月18日 16時) (レス) id: d173d4245c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モブ | 作成日時:2020年7月4日 1時