4 ページ6
｢……ということで、しばらくの間有給をいただきたいんですが……｣
｢……また帰省ですか？
まぁ、今のところあまり忙しくないですし……有給もほとんど消化してないみたいですし、断る理由もないですね｣
塩崎さんは呆れたように微笑を零してから、申請書を受け取った。
｢ありがとうございます！ 有給取るなんて生まれて初めてで……なんだか感慨深いです。前の職場は取りたくても取れなかったんで……｣
｢……
｢あはは、そうですね。まぁでも、極道なんかに比べたら全然楽な仕事……｣
｢……何の話？｣
｢うわっ！？ あ、周……！｣
背後からいきなり聞こえてきた声に、驚きのあまり仰け反った。……というか、いつの間に背後に……
｢久しぶりだね、姉さん。迎えに来たよ。
……ついでに塩崎も久しぶり｣
｢ご無沙汰してます、周さん。遊園地はどうでした？｣
｢そんなこと、聞かれるまでもないよ。……姉さんと行ったんだもん、楽しくないわけないでしょ？｣
｢……そうですか、よかったです｣
……なんか、知らぬ間に仲良くなってる……そう言えば、あの日も2人で電話してたっけ。塩崎さん意外と面倒見いいし、何気に周も懐いてるのかも。
｢……姉さん？｣
｢あ……いえ、なんでも。部屋に戻って準備してきますね｣
無意識に緩んでしまっていた口角を隠すようにして、荷物を用意するため自室へ戻った。
｢……あ、いののん。どこかに旅行？｣
必要最低限の荷物をスーツケースに詰めて部屋を出ると、専属医師の綾瀬さんにばったり遭遇した。……どうやら、既にあだ名を考えてくれていたらしい。
｢あはは、はい。当分実家に帰省するんです｣
｢そう。……また怪我しないように気をつけて。
そうだ、これ｣
綾瀬さんはそう言って、白衣のポケットの中から1枚の紙切れを取り出した。
｢これは……？｣
｢私の連絡先。……万が一怪我したらその番号に電話して。
できる限りなんとかするから｣
それだけ言って、彼女は医務室の方へ消えていった。
……変わってるけど、きっと誰かを助けたいって気持ちは人一倍ある人なんだろう。密かにそう思った。
｢……ありがとうございます｣
そう小さく呟いて、私はその紙切れを胸ポケットにしまい込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーｯ！！返信ありがとうございます、！ 読了後速攻でフォローさせていただきました……！！供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……！！🙏 (3月10日 18時) (
レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます！！ 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……！！ (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……！ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……！救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……！！ (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：べるーが | 作成日時：2023年4月19日 22時
