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「……あの家はやばいんだよ。あの妙な毒の術式をかけられたら、姉さんだって……」
「……心配いらないよ。他の術師ならともかく、こっちにはシンシンがいるんだし」
「……あいつ、そんなにすごいのか?」
「そうだね。まだ1年だから、戦闘経験は多くないけど……相手が毒の術式なら、十中八九こっちの勝ちだ」
……姉さんも、そう思ったからあいつと一緒に残ったのだろうか。そう考えるとやり切れなかった。
「……、やっぱり僕も……い゙っ!」
「……ダメだよ。君はもうゆっくり休んで。
……君に何かあったら、それこそお姉さんが悲しむ」
「…………」
なんとか立ち上がろうとするが、身体中に残った傷がズキズキと痛んで、その場に倒れ込んでしまう。
「情けないなんて思う必要はないよ。
……ここまで酷い怪我なのに、よく耐えたね。普通の人間ならとっくに気絶してる」
「……物心つく前から訓練はひと通り受けてるんだ。これくらい、猪瀬家の人間なら当たり前だよ」
「そうだとしても、あそこまで耐えるのは相当のメンタルがいる。……お姉さんのために頑張ったんだね」
そう言って、彼女は何のためらいもなく僕の頭をなでる。……ほのかに温かい指先を、僕の瞼を閉じるかのようにそっとかざした。
……もはや抵抗する気も起きず、さざ波のように押し寄せる眠気に身を委ねるしかなかった。
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「……そうやったんですね。なら、早よ助けへんとですね」
できる限り簡潔に菖さんから聞いた情報について伝えると、新田くんはすんなりと理解してくれたようだった。
「……行きましょう。兄さんがいる場所なら、なんとなく目星はついてます」
「えっ……どこですか?」
「……さっき周の服を見たとき、床木の破片が刺さってたんです。……この家の部屋は畳づくりなので、多分……」
「……! 廊下、ってことですか?」
「そういうことです。……さっきの音もほぼ真上から聴こえてましたし、おそらく兄さんもそこに」
その言葉に頷き、彼は地下室の扉へ向けて踵を返した。……地下室を出ようとしたそのとき、不意に新田くんが振り返った。
「……先生。大丈夫ですか? あんな光景見てもうたら無理もないやろうけど……顔色、悪いですよ」
「え? ……あはは、大丈夫ですよ。行きましょう」
「…………そう、ですね」
……それだけ言ってから、彼は扉をゆっくりと押し開けた。
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ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時