検索窓
今日:25 hit、昨日:5 hit、合計:5,269 hit

34 ページ38

「……っはぁ、はぁっ……ごめん、渋滞はまって遅れた……」


「いえ、タイミングばっちりです。
急いで来てくれはってありがとうございます、綾瀬さん」


「……あ、綾瀬さん……!?」


私がそう言い終わるや否や、彼女はツカツカとこちらに向かってくる。……そして、状況が分からずその場に硬直している私の頬をつねった。


「いたたたたっ、痛いです綾瀬さん!」


「……なんで、もっと早く電話しなかったの? 怪我したら連絡しろ、って言ったのに。

……いい、いののん。君は記憶喪失だから、人の『死』にはあまり馴染みがないのかもしれないけど……人って、結構簡単に死ぬんだよ」


……そう言って、彼女はいつになく真剣な眼差しで私の目を見つめた。新田くんもどこか感慨深い表情をしているのは、以前の教師のことを思い出しているからだろうか。


「…………すみません。
……綾瀬さん。弟のこと、よろしくお願いします」


「もちろん。言われなくてもそのつもり。……そんなに心配しなくても大丈夫だよ。治せない怪我じゃないから」


私がそう言って深々と頭を下げると、彼女は私の頭をポンポンとなでて、そのまま周の身体へと向き直った。


「……一応、俺の術式は掛けてあります。こっちのドアを通れば裏口に出るんで、お願いしますね」


「分かった。……じゃあ、私は近くのホテルに向かうから。2人も、目的を果たしたらすぐ来ること。……いいね?」


その言葉に大きく頷く。……彼女は満足そうに笑ってから、周の身体を抱えて早足で部屋を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……すみません、新田くん。
さっきの言い方、大人げなかった……ですよね」


……術式の性質上、怪我人を相手取ることが多い彼にとって、『死』というものは身近なものなのかもしれない。誰かを助けられなかった経験だって、1度や2度じゃないはずだ。

……そんな彼だからこそ、冷静になって、撤退するという選択肢を提案してくれたのだろう。


「いえ、気にせんといてください。……正直、自信なかったんやと思います。俺の術式は戦闘向きやないし、先生のこと守りきれへんって。けど……




それでも、あなたは俺が守ります。絶対、死なせません」


……そう言って差し出された手は、手袋越しにも分かるほどに震えていた。その震えを止めるように、私はその手を強く握り返した。

35→←33



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
19人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。