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……頬に何かの液体が触れる感覚で、おもむろに目を覚ました。朦朧とした意識のまま頬を拭うと……その指は、目が覚めるような“赤色”に染まっていた。
「な……何、これ……」
「……、ゔぅ…………」
うめき声のする方を見ると、全身血だらけになった塩田さんが床に倒れ込んでいた。……恐怖で上手く動かない身体を必死に動かし、彼女の身体を揺さぶる。
「…………!? し……塩田さん、塩田さんっ!!」
「……っ、ごほっ……」
……不幸中の幸いか、かろうじて息はある。周りを見渡すと、塩田さんと同じように全身血だらけになった組員たちが何人も倒れていた。
「……猪瀬先生?」
「……!! 新田、くん……」
組員たちと同じく、真っ赤に染まった制服。
……だが、それが彼の血ではないということは、誰の目から見ても明らかだった。
「……この人たちは……全部、あなたが?
おかしいですよ、いくら何でも殺すなんて……」
「…………おかしい?」
……さっきよりもワントーン低くなる声。普段の彼と同一人物とは思えないような表情に、身体の震えは止まるどころか、さらに酷くなっていく。
「……おかしいのは、先生の方ですよ。
第一、こうでもせぇへんと、死んでたのは先生の方やったやないですか」
彼は血がポタポタと滴り落ちるナイフを手に持ったまま、おもむろに距離を詰めてくる。……必死に後ずさりを続けていたが、壁際まで追い詰められてしまった。
「先生って、いっつもそうですよね。死ぬ寸前まで無理して……そんなんじゃ、いつ死んでもおかしないですよ。
……どうせ死ぬんなら、いっそ……俺が、この手で……」
「……や、やめて……っ」
震える声でそう呟いた瞬間……焼けるような熱さと痛みが左腹部に走り、シャツにじんわりと血が染みていく。……どこか現実味のないその感覚に、また意識が遠のいた。
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「……、先生!
よかった、目ぇ覚めて……大丈夫ですか?」
「……っや、やめ……!! って、あれ……?」
彼の手をパシッと払いのけ、咄嗟に腹部に目をやるが、傷は愚か、僅かな血痕さえ見当たらなかった。
「……術式はもう解いたはずですけど。まだ寝ぼけてるんですかね」
「……!? し、塩田さん……生きてる!?」
「は? ……勝手に殺さないでくださいよ」
彼女はいつもの呆れ顔でそう言ったあと、大きくため息をついた。
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ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時