検索窓
今日:28 hit、昨日:36 hit、合計:5,308 hit

30 ページ32

……頬に何かの液体が触れる感覚で、おもむろに目を覚ました。朦朧とした意識のまま頬を拭うと……その指は、目が覚めるような“赤色”に染まっていた。


「な……何、これ……」


「……、ゔぅ…………」


うめき声のする方を見ると、全身血だらけになった塩田さんが床に倒れ込んでいた。……恐怖で上手く動かない身体を必死に動かし、彼女の身体を揺さぶる。


「…………!? し……塩田さん、塩田さんっ!!」


「……っ、ごほっ……」


……不幸中の幸いか、かろうじて息はある。周りを見渡すと、塩田さんと同じように全身血だらけになった組員たちが何人も倒れていた。


「……猪瀬先生?」


「……!! 新田、くん……」


組員たちと同じく、真っ赤に染まった制服。
……だが、それが彼の血ではないということは、誰の目から見ても明らかだった。


「……この人たちは……全部、あなたが?
おかしいですよ、いくら何でも殺すなんて……」


「…………おかしい?」


……さっきよりもワントーン低くなる声。普段の彼と同一人物とは思えないような表情に、身体の震えは止まるどころか、さらに酷くなっていく。


「……おかしいのは、先生の方ですよ。
第一、こうでもせぇへんと、死んでたのは先生の方やったやないですか」


彼は血がポタポタと滴り落ちるナイフを手に持ったまま、おもむろに距離を詰めてくる。……必死に後ずさりを続けていたが、壁際まで追い詰められてしまった。


「先生って、いっつもそうですよね。死ぬ寸前まで無理して……そんなんじゃ、いつ死んでもおかしないですよ。

……どうせ死ぬんなら、いっそ……俺が、この手で……」


「……や、やめて……っ」


震える声でそう呟いた瞬間……焼けるような熱さと痛みが左腹部に走り、シャツにじんわりと血が染みていく。……どこか現実味のないその感覚に、また意識が遠のいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……、先生!
よかった、目ぇ覚めて……大丈夫ですか?」


「……っや、やめ……!! って、あれ……?」


彼の手をパシッと払いのけ、咄嗟に腹部に目をやるが、傷は愚か、僅かな血痕さえ見当たらなかった。


「……術式はもう解いたはずですけど。まだ寝ぼけてるんですかね」


「……!? し、塩田さん……生きてる!?」


「は? ……勝手に殺さないでくださいよ」


彼女はいつもの呆れ顔でそう言ったあと、大きくため息をついた。

31→←29



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
19人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。