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「あなたのことは、割と気に入っているんです。だから……とても残念です」
「……!? ごほっ、ごほっ……!!」
……彼女がそう言った瞬間、喉の焼けるような痛みと身体中の痺れで、その場に倒れ込んだ。
痺れる手足をブルブルと痙攣させながらも、何とか視線を塩田さんの方へ向けると、彼女はニヤける口もとを手で覆い隠していた。
「っふふ……よかった。天下の猪瀬家と言えど、流石に毒への耐性は持ちえないみたいですね」
「っな……な、んで……」
「……あの子の話を聞いて、おかしいと思いませんでしたか? 唯一の跡取りである菖の食事に毒が盛られているかもしれないのに、家の者が何も対処しないなんて」
……確かに、その通りだ。食事を取るたびに毒が盛られていたら、流石に誰でも感付く。毒が入っていることを調べた上で、真っ先に食事を用意した人間を疑うはずだ。
それが、彼に恨みを持つ人物……彼の姉たちであるなら、なおさら疑いは強まっただろう。
「……何度調べても、毒なんて見つからなかったんですよ。食材の一つ一つから皿の一枚一枚に至るまで、調べられるところは全て調べ尽くしました。けど……何も、見つからなかった。……どうしてだと思います?」
「……っは……、は……っ」
「……失礼、そろそろ呼吸も難しくなってくる頃ですね。
理由は至って単純です。今、あなたが苦しんでいる理由と同じですよ。……ここまで言えば分かりますね?」
手足が痙攣し、視界が少しずつ遠のいていく。
……目を閉じたら、多分一生目覚めない。なんとなくそんな気がして、薄れゆく意識を必死に保っていた。
「…………私なんです。菖の膳に毒を盛ったのは」
「…………!?」
……ただでさえ、全身に毒が回って上手く呼吸ができないのに、驚きのあまり呼吸が止まる。
「……私の術式は、対象に抱く感情を『毒』に変えるんです。その想いが強ければ強いほど、毒の回りは速く、強力になる。
……ただし、毒が効くのは相手のことを強く想っているときだけ。少しでも気が逸れれば、効果は薄まります」
「……っ、ゔっ……!!」
……術式の開示により、痺れがさらに強くなり、意識が遠のいていく。……もはや上を見上げる体力も、私には残っていなかった。
……これ、多分死ぬな……変に冷静な自分に驚きつつも、そっと目を閉じようとしたそのとき……バン、と乱暴な音がして襖が開いた。
「……、猪瀬先生!!」
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ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時