25《兎崎家、回想�◆� ページ27
姉たちに命を狙われるのは、食事中だけではなかった。襖の引出から机の裏まで、あらゆる場所に毒針が仕掛けていることなんてしょっちゅうだった。
人のいないところでたびたび姉たちに暴力を振るわれ、俺の身体はいつも生傷や痣が絶えなかった。
｢……菖さま、その傷は……｣
｢あ……いえ、訓練で少し下手を打ってしまっただけです。お気になさらず｣
……訓練の傷だと言えば、案外バレないものだな。そんなふうに思いながらいつも通り部屋に戻ると、誰かが部屋の襖を開けて顔を覗かせた。
｢……失礼します｣
｢……っ、姉上……｣
思わず声が震える。……声の主は、兎崎家五女の菫姉さんだった。……俺が姉たちに痛ぶられているとき、唯一それに加担しなかったのがこの人だ。
……だが、率先して姉たちの行動を止めることもなく、ただただ無表情で俺を見つめている、そんな人だった。
｢……夕食をあまり召し上がっていなかったようなので、夜食をお持ちしました｣
｢夜、食……？｣
｢……心配せずとも、毒は入っていませんよ。正確に言えば事前に抜いた、と言った方が正しいかもしれませんが｣
｢……！ 嘘、ですよね？｣
｢……まあ、疑われるのも仕方がありませんね。
無理して召し上がらなくても結構です。……必要なければ、このまま処分しますので｣
｢……、いえ。いただきます｣
……大方、俺を騙すための方便だろう。そうとしか思えなかったが、残せば何をされるか分かったものではない。
嫌々ながらも、俺はその茶漬けに口をつけた。
｢……！！｣
……どうということのない、ただの茶漬けだ。けど、毒の入っていない食事を久しく食べていなかった俺にとって、それは……涙が出るほどに美味しい食事だった。
｢っ……美味しいです、とても……｣
……幾分か塩辛くなった茶漬けを平らげ、お礼を言おうと彼女の方に向き直った瞬間、彼女は不意に俺のことをぎゅっと抱きしめた。
｢……ごめんね、菖……今まで、助けてあげられなくて。姉さんたちが怖くて、見ていることしかできなかった｣
｢姉、上……｣
｢姉さんたちは違うかもしれないけど、少なくとも私は……あなたが苦しむところなんて、もう見たくない｣
｢……！｣
肩が少しずつ濡れていくのが分かる。
……いつも無表情で、まるで人形のようだったあの人が泣く姿を見たのは、後にも先にもこの時だけだった。
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ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーｯ！！返信ありがとうございます、！ 読了後速攻でフォローさせていただきました……！！供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……！！🙏 (3月10日 18時) (
レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます！！ 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……！！ (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……！ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……！救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……！！ (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べるーが | 作成日時：2023年4月19日 22時
