24《兎崎家、回想》 ページ26
兎崎家の末子……もとい長男として生まれた俺は、物心つく前から既に跡取りとしての教育を受けてきた。
……女兄弟のなかで唯一の男児ということもあり、早くから丁稚の役目を押し付けられていた姉たちとは打って変わって、手塩にかけて育てられた。
そんな俺が最も恐れていた時間は、居間での食事の時間だった。……どんな厳しい訓練も、この時間に比べればどうということはないように思えた。
｢…………｣
｢……菖、食べないのか｣
｢あっ、いえ……いただきます｣
震える手で箸を持ち、無理やり口の中に押し込む。……その瞬間、口の中に耐えがたい痛みが広がり、それを吐き出すとともにその場に倒れ込んだ。
……俺の周りで慌てふためく大人たちとは対照的に、姉たちは隅の方に座ったまま、冷たい笑みを浮かべていた。
｢……ごほっ、ごほっ……だ、大丈夫です。少しむせただけなので、お気になさらず｣
……ひと口食べるごとに痺れるような痛みが走るが、我慢して無理やり胃に流し込む。何度も吐き出しそうになりながらも、なんとか膳の上の料理を食べきった。
俺にとっての食事は、苦痛を伴う“作業”のようなものだった。……俺の膳にだけ盛られた『毒』が、どんな美味しい料理も苦痛に変えてしまう。
｢ごちそうさまでした。……美味しかったです、とても｣
毒が盛られている理由も、その毒を盛った犯人も、とっくに見当はついていた。……けど、そのことを周りの大人たちに言おうとはしなかった。
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｢……どうしてだと思います？｣
菖さんは、不意にそう問いかけてきた。
……あまりの壮絶な話に何も言えずにいると、彼は私が何か答えるより先に言葉を続けた。
｢私が苦しんでいる間だけは、姉上たちは笑ってくれるんです。その時だけは……『姉弟』になれるような気がして。
……っはは、馬鹿みたいだと思うでしょう？ けど、当時は本気でそう思ってたんです。……いえ、今だって私は……｣
俯きがちになりながらも、彼は言葉を続けた。
……さっきまでの柔らかな笑顔が少しづつ崩れていくのを見ながら、彼の話に耳を傾けた。
｢……私たちが『姉弟』になるには、この方法しかなかったんです。……そのためなら、私は……いくら毒を飲まされたって構わない｣
……とても冗談には聞こえないその言葉は、信じられないくらい重たく、私の心にのしかかった。
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ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーｯ！！返信ありがとうございます、！ 読了後速攻でフォローさせていただきました……！！供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……！！🙏 (3月10日 18時) (
レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます！！ 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……！！ (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……！ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……！救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……！！ (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べるーが | 作成日時：2023年4月19日 22時
