19 ページ21
「……本当だ、もう起きてる。流石に早いな……」
「……! あなた、遊園地のときの……!」
「菖でいいですよ、Aさん。
……チョコレート、ごちそうさまでした」
その人……兎崎菖は、そう言って穏やかに微笑んだ。
「あ、いえ……それより、これはどういうつもりですか?」
「そうですね……もう目ははっきり覚めてるみたいですし、早いところ説明してしまいましょうか。……あなたをここへ連れてきた理由は、大きく分けて2つ。
ひとつ、人質としての利用価値があるから。
ふたつ、単純にあなた自身への興味があるから」
「人質……」
「ええ。……まぁ正直、一か八かの賭けなんですけどね。
姉上にも心配されてしまいましたし」
彼はそう言って、困ったように笑いながら肩をすくめた。
「……姉上、というのは……
「塩田……? あぁ、姉上のことですか。……その口ぶりだと姉上とはお知り合いみたいですね。それならそうと言ってくれれば良いのに、姉上も意地が悪いな」
そう言って微笑む彼の表情は、本当に“姉上”のことを慕っているようで……それが私には逆に不気味だった。……榊木さんから聞かされていた話とは、明らかに様子が違う。
「……? どうしました?」
「いえ、少し驚いただけです。……お姉さんとは不仲だと聞かされていたんですが、仲良いんですね」
「……あぁ、あながち間違ってませんよ。
ほかの4人とはほとんど口もきかないので」
……彼の瞳に一瞬、暗い影が灯るのが見えた。
“姉上”とは一線を画す他人行儀な呼び方からも、決して円満とは言えない家庭事情がありありと読み取れた。
「けど、姉上だけは別です。……私を『弟』として見てくれたのは、あの人だけでしたから」
「……そうですか。だから、そんなに慕ってるんですね」
「ええ。……単純に兄弟トークするだけなら、あなたの兄弟とも仲良くなれると思うんですけどね」
彼のそのセリフは、本当に残念がっているようにも、そうではないようにも思えた。
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時