1《兎崎家》 ページ3
｢……姉上。隣、いいですか？｣
｢菖……その呼び方はやめなさいっていつも言ってるのに｣
｢ふふ、姉上だって敬語忘れてるじゃないですか。
……心配しなくても、誰もいないから平気ですよ｣
菖はそう言って、私の隣に腰を下ろした。
……いけない、久しぶりに実家に帰ってきたせいか、私も気が抜けてしまっているようだ。
｢……まだ慣れないんです、あの話し方。敬語を取るだけならまだしも、姉上に向かって命令口調なんて……｣
｢気にする必要はないと思いますよ。弱い者が強い者に従う……それがこの家のルールでしょう？｣
｢……けど、いくら強かろうが、尊敬できるかどうかはまた別の話です。……そんなことくらい、姉上なら分かるんじゃないですか｣
菖はそう言って、にっこりと微笑んでみせた。
この家で誰よりも強いのに、彼は決して驕らない。……それこそが、彼の強さの秘訣なのかもしれない。
｢……それで、何か用ですか？
わざわざ私の部屋まで来るなんて珍しいですね｣
｢……いいえ、特には｣
｢は？ じゃあ、なんで……｣
｢……その、私なりに甘えているつもりだったんですけど……分かりませんでした？｣
｢……っ、あははっ！｣
分かりにくすぎる愛情表現に、一気に込み上がる笑いを堪えきれず、つい吹き出した。
｢それなら、最初からそう言ってくれればいいのに……
本当、昔から不器用な人ですね｣
息を整えつつ頭をなでてやると、彼は少しバツが悪そうにはにかんだ。
｢……すみません、面と向かって言うのは恥ずかしくて｣
｢いいですよ、むしろあなたの年ならそれが普通ですし。
……まぁこの年で頭をなでられて喜ぶっていうのは、そこそこ異常ではありますけどね……｣
幼い頃から偏った教育を受けて育った彼は、大人になるための欠片をいくつか拾い忘れてしまったのかもしれない。
……だから、あの人に惹かれたのだろうか。
｢……それで？ 猪瀬家の件はどうするんですか｣
｢あぁ、それならもう策は練ってあるんです。
……姉上にも協力してもらいたいんですが、いいですか？｣
｢……ええ。ただ、一つだけ条件があります。
あの人……猪瀬Aのことは、私に任せてくれませんか｣
｢はぁ、分かりました。……けど、姉上が特定の人にこだわるなんて珍しいですね｣
｢……それはお互い様じゃないですか、菖｣
……私がそう言うと、菖は確かにそうですね、と言ってまた笑ってみせた。
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ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーｯ！！返信ありがとうございます、！ 読了後速攻でフォローさせていただきました……！！供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……！！🙏 (3月10日 18時) (
レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます！！ 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……！！ (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……！ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……！救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……！！ (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べるーが | 作成日時：2023年4月19日 22時
