14《兎崎家》 ページ16
「皆も揃ったことですし、ぼちぼち始ましょうか。……菫、資料を」
「はい、若」
「今回の作戦ですが……普通にやり合えば
……歴史がある、ということは、その分使える金やコネも多いということだ。比較的新しい兎崎組は、その点でかなり不利とも言える。
「……まぁ、『普通に』やり合えばの話ですが。
私たちだって、私たちなりの言い分はあります。このまま泣き寝入りするつもりは毛頭ありません」
……菖がそう言った瞬間、その場の全員がほっと安堵したように肩の力を抜いた。
「……それで、一体どう仕掛けるつもりだ? 菖」
組員たちのつかの間のリラックスを蹴り破るかのように、組長である父の声が響いた。
「ふふ……そんな怖い顔をしていては、皆が萎縮してしまいますよ。父上」
「む……そうか。そんなつもりはなかったのだが」
父は少しだけしゅんとした様子で、組員たちに謝罪の言葉をかけた。……まだ萎縮してはいるが、さっきに比べたら全然マシだ。
菖のひと言で、場の空気が一気に変わる。
……そういうのも含めて、彼の“才能”なのだろう。
「……さぁ、良い感じにリラックスしたところで、話を続けましょうか。
猪瀬組の強さの所以は、やはり若頭の2人……猪瀬梓と猪瀬周の存在が大きいですね」
高い戦闘能力とカリスマ性で組をまとめあげる猪瀬梓。
兄に匹敵する強さを持ちながら、頭脳派で高い作戦立案力を持つ猪瀬周。
……まずはこの2人をどうにかしなければ、猪瀬組を倒すなんて不可能に近い。
「はっきりいってこの2人はかなり手強いと思います。戦闘面でも頭脳面でも隙がない。ですが……そんな彼らにも、ひとつだけ弱点があるんです。
それは……」
ひと呼吸置いてから、彼は話を続けた。
「……猪瀬家次子、猪瀬A。
彼女こそ、彼らの唯一の弱点と言ってもいい存在です」
「猪瀬Aって……3年前に突如足を洗って、シャバ入りしたって言うあの女ですか?」
「ああ。……この間の遊園地での一件で確信しました。彼ら、Aさんに関してはかなりご執心みたいなんです。
……今回は、それを利用します」
「…………」
そう話す菖の表情は、まるで子供のようだった。
無邪気ささえも感じられるその表情に、なぜかざわつく心を抑えつけながら、私は作戦内容に耳を傾けていた。
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時