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「……っ、あっははは!」
私がそう告げた瞬間、彼はお腹を抱えて笑いだした。
私のことを嘲るような歪んだ笑顔に、つい身震いした。
「あの猪瀬Aがなんでこんなとこに来たのかと思ったら、記憶喪失? ……っはは、ざまぁみろ!」
「あ、えぇと……?」
「……この際はっきり言うけど、俺あんたらのこと大っ嫌いなんです。……下の奴らから散々搾り取っておきながら、感謝もしねぇでふんぞり返ってるような連中だし」
……さっき感じた私や兄さんに対する“憎悪”の理由が、ようやく分かった。
極道やマフィアなどの組織は、組織の上の人間が利益のほとんどを独占する仕組みになっている。……そう考えると、彼の怒りも当然のことのように思えてくる。
「……そうですか」
「……本当に記憶喪失なんすか?
今までと言うほど変わってな……」
「……! ほ、本当ですか!?」
「っ……!?」
驚きのあまり反射的に彼の肩を掴むと、彼はいきなりのことに驚いたのか、ビクッと肩を震わせた。
「あ……っ、すみません」
慌てて彼の肩から手を退ける。彼の反応は、驚いている、と言うより……むしろ、怖がっているように見えた。
そんな風に思いながら、さっき言われた言葉を思い返す。
……もし彼の言っていることが本当だとしたら、兄さんや周は、他のみんなは……やっぱり喜ぶのだろうか。そうだとしたら、私は……
「…………」
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任された仕事がようやくひと区切り付き、ちらりと時計に目をやると、既に深夜に入ろうとしていた。
ふと対角線上にある“彼女”のデスクを覗くと、真剣な表情でPCのモニターを凝視していた。
「…………」
……やっぱり、あの日と同じ冷たい目だ。記憶を失くしたなんて、とてもじゃないが信じられない。
「……榊木さん」
「うわっ……! なんすか、いきなり」
いきなり背後から声をかけてこられると、悪い意味で心臓に悪い。……未だに、
「驚かせてすみません……もらった仕事、全部片付いたので新しい仕事をもらえませんか?」
「は……? 全部って……あれ全部っすか?」
そう問い直すと、彼女はなんでもないと言った風に頷いた。……常人のスピードなら、どんなに急いでも丸2日はかかる量だ。それをたった半日で?
……もしかしたら、本当に記憶喪失なのかもしれない。
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ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時