検索窓
今日:36 hit、昨日:5 hit、合計:5,280 hit

9 ページ11

「……っ、あっははは!」


私がそう告げた瞬間、彼はお腹を抱えて笑いだした。
私のことを嘲るような歪んだ笑顔に、つい身震いした。


「あの猪瀬Aがなんでこんなとこに来たのかと思ったら、記憶喪失? ……っはは、ざまぁみろ!」


「あ、えぇと……?」


「……この際はっきり言うけど、俺あんたらのこと大っ嫌いなんです。……下の奴らから散々搾り取っておきながら、感謝もしねぇでふんぞり返ってるような連中だし」


……さっき感じた私や兄さんに対する“憎悪”の理由が、ようやく分かった。

極道やマフィアなどの組織は、組織の上の人間が利益のほとんどを独占する仕組みになっている。……そう考えると、彼の怒りも当然のことのように思えてくる。


「……そうですか」


「……本当に記憶喪失なんすか?
今までと言うほど変わってな……」


「……! ほ、本当ですか!?」


「っ……!?」


驚きのあまり反射的に彼の肩を掴むと、彼はいきなりのことに驚いたのか、ビクッと肩を震わせた。


「あ……っ、すみません」


慌てて彼の肩から手を退ける。彼の反応は、驚いている、と言うより……むしろ、怖がっているように見えた。


そんな風に思いながら、さっき言われた言葉を思い返す。

……もし彼の言っていることが本当だとしたら、兄さんや周は、他のみんなは……やっぱり喜ぶのだろうか。そうだとしたら、私は……


「…………」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


任された仕事がようやくひと区切り付き、ちらりと時計に目をやると、既に深夜に入ろうとしていた。


ふと対角線上にある“彼女”のデスクを覗くと、真剣な表情でPCのモニターを凝視していた。


「…………」


……やっぱり、あの日と同じ冷たい目だ。記憶を失くしたなんて、とてもじゃないが信じられない。


「……榊木さん」


「うわっ……! なんすか、いきなり」


いきなり背後から声をかけてこられると、悪い意味で心臓に悪い。……未だに、猪瀬家(彼ら)への恐怖感は完全には拭いきれていない。


「驚かせてすみません……もらった仕事、全部片付いたので新しい仕事をもらえませんか?」


「は……? 全部って……あれ全部っすか?」


そう問い直すと、彼女はなんでもないと言った風に頷いた。……常人のスピードなら、どんなに急いでも丸2日はかかる量だ。それをたった半日で?


……もしかしたら、本当に記憶喪失なのかもしれない。

10→←8



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
19人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ねのあ(プロフ) - べるーがさん» あーッ!!返信ありがとうございます、! 読了後速攻でフォローさせていただきました……!!供給が少ないオタクとして共に更新していきましょう……!!🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ねのあさん» わーーーありがとうございます!! 私も初コメきてテンション爆上がりしてます⤴⤴ 更新頑張るのでこれからも応援していただけると嬉しいです……!! (3月10日 18時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
ねのあ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです……!ずっと新田姉弟の話を探していたんですが、ようやく見つけられました……!救われました、QOLが爆上がりしてます……これから応援させていただきます……!! (3月9日 23時) (レス) @page37 id: 919a6d5cdf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:べるーが | 作成日時:2023年4月19日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。