The feelings of a squire# ページ5
〜夏油視点〜
疲れた…
私は出張任務で高専を1晩離れていた。
もちろんその間はAに会えていないわけで。
「はやく会いたい…ッ」
寂しくて、不安で、怖くて、涙が出そうで、
震える声が口から零れる。
Aに早く会いたい一心で校舎に向かっていると、廊下で大好きな後ろ姿が見える。
思わず涙が出そうになる。
だけど、彼女は私が泣いていると困ってしまうだろう。
何より私が笑顔の私を彼女に見て欲しい。
そう思って、なるべく笑顔で彼女に声をかけた。
しかし、私の笑顔は彼女の一言で崩れてしまう。
「おはよう、A」
『おはよう、''夏油''』
私は彼女が名前で読んでくれないことに酷く動揺した。
多分私は泣きそうな顔をしているだろう。
彼女はそんな私に不思議そうに問いかけてくる。
『夏油…?』
「……で…ない…?」
『…?』
「なんで、名前で呼んでくれないの…?」
彼女は少し驚いたように見える。
なんで、どうして、悪いことでもしただろうか、なんで、なんで。
とにかく私の頭は怒らせてしまった、悲しい、怖い、という考えでいっぱいだった。
「なんで、何も言わないの…?私の何がいけなかったのッ…!ねぇ…!!!!!私、Aに嫌われたら、生きていけないッ!」
思わず声が大きくなってしまう。
なんで、どうして、嫌わないで
そんな言葉が溢れて、うわ言のように繰り返す。
目の前が暗くなりかけてきた頃、私は彼女の暖かくて柔らかい手に頬を包まれていた。
『傑、こっち向いて。』
彼女に呼ばれて私は顔を上げ、縋り付くように名前を呼んだ。
『傑は何も悪くないよ。大丈夫。私は可愛い傑が好きだよ。』
『さっきはごめんね。傑の反応を見て見たくて、少しからかったの。』
彼女の優しくて甘い声が響く。
彼女はそのまま私を抱きしめ、頭を撫でた。
嬉しくて、でも、抱きしめ返すのには躊躇した。
大好きなAに許可なく触れてもいいんだろうか。
『傑は抱きしめてくれないの?』
「いいのッ…?」
『私は傑とくっつきたいんだけどな』
私は嬉しい気持ちを抑えきれずに抱き締め返した。
彼女は泣き止むまでそうしてくれた。
彼女に一緒に教室まで行こうと言われ、手を繋ぐ許可を貰えたので手を繋ぐ。
さりげなく恋人繋ぎに繋いでもらえて、私はうっとりとその手を眺めていた。
Another squire→←My first encounter
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作者名:主人 | 作成日時:2022年2月26日 18時