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ページ45

「クソ!クソッ!!」


馬車に乗せられ、何度も壁に体当たりするが当然ヒビさえ入らず。



「くそ……」



逃げられない

そう悟った。


歯を食いしばれば、逃げようとして殴られた頰がギリギリ痛んだ。



しかしふと思考を止めた。


どうして俺はこんなに必死なんだ?

だっていつも今日は死ねるかなって願っていた



いつから、俺はこんなに…









『ねぇ、願って』



ポツリと呟かれた言葉にハッとした。



『君はこのままだと死ぬんでしょう?』



少女は普段よりも落ち着いた声で問いかけた。

確信しているような問いだった。



「…今更俺に同情でもしたか?」

『ううん、私のエゴ』



かぶりを振られ、君は沢山私に教えてくれたから、と呟いた。

今度は私の番だと。




『いつか言ったよね。死ぬ時に灰になるのは悪魔の特徴で、天使は違うんだって』



少女はゆっくり微笑んだ。



『君に教えてあげる
天使は死ぬ時、星になるの』




気がつけば少女の腹辺りが微かに淡い光を灯らせている。



なんでそんな話を今するんだ

そんなのまるで、今からお前が、



『私達はそうやって天界に還るの』



光はどんどん強まっている。

まるで意志の強さを表しているように。



『願って、生きたいって』

「やだ、」

『自由になりたいって』

「嫌だ!」




『私の願いを叶えて』


少女が俺の手を握った。

私がいた事、憶えていて。それが願いだと呟いた。




あぁくそ、そんな言い方、ないだろ



『願って。私の為に』



そう言われたら俺は、断れないじゃないか






「俺は…、」





自由になりたい






『その願い、聞き届けた』




星が飛び散った。

視界一杯瞬くいそれは青く白く赤く黄色く光り、少女という存在を紐解いていく。


眩い光に包まれる中、少女は嬉しそうに笑った。



『ありがとう、レイ』









気がつけば道中に倒れていた。

馬車も御者も、そして少女もいなかった。


頭上では、満天の星が散らばっていた。





「とんだブラックで働いてるな、お前」


次誕生した時、少女はもう少女ではないのだろう。

「いい子」になって、軽々と命を燃やすのだろう。




「俺、生きるよ。お前の分も。ずっと忘れないから…ッ」



懸命に空へ手を伸ばす。

遥か彼方の星は掴めなかった。


張り裂けそうな胸を抱え、喉が潰れ、涙も枯れ、声が出なくなっても叫び続けた。

感謝と、懺悔と、伝えなかった想いを、星に向かって。

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凛香奈 - 続編楽しみにしてます! (2021年1月22日 19時) (レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱふぇ - 最高。絵上手すぎです!面白すぎてハゲそう(真顔。更新楽しみにしてます! (2020年12月19日 13時) (レス) id: 00337bf9fd (このIDを非表示/違反報告)
トエル・タウ - ノーマンと夢主ちゃんの関係、ぼたぼた涙が出てきました…。どうか幸せになってくれ…。 (2020年7月24日 14時) (レス) id: fc7aaf8032 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 0aa8d61485 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごーーく面白いです!!約ネバ好きのレイ推しなのですっごく嬉しいです!Rain (2020年6月16日 18時) (レス) id: a884ba806a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レレ | 作成日時:2019年8月29日 16時

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