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89話 ページ5













『___...』


前を走るエマとノーマン。

2人の後ろを走る私。


足音は当然3人分、だけど



ふと聞こえた人為的な音に後ろを振り返る。


私が走るスピードが落ちたのに気付いたのか前の2人も合わせてくれて、そしてお互いハッとして足を止めた。


「A」


ノーマンに呼ばれ、私は手に持っていた袋を茂みへ投げ飛ばす。



あともう少しの所で柵が見える。

あの先に漸くある壁。


けど、私達はじっと今来た道に目を凝らした。



ザク、ザク、と草を踏みしめる音が近づいて来て確信に変わる。



そして姿を現したのは。






『ママ?』




レイが足止めしていたはずの、ママ。



思わず素っ頓狂な声で呼ぶと、ニコリと微笑まれた。



(……?)




「どうしたの?」


エマとノーマンがパッと笑みを作り、ノーマンが何やら話しかけてるけど、私には殆ど聞こえてなかった。



いや、なんていうか……



この人、本当に私達が知ってる人か?



自分でも可笑しい事考えてると思ったけど、けどママはこんな表情なんてしない

こんな、私達を見下ろすような冷たい目なんてしない






「10年」




ノーマンを遮り、ゆったりとした声がする。




「10年一緒に暮らしたけれど、お芝居抜きでお話するのはこれが初めてね」





"お芝居抜き"




さっきそんな事を考えていたからか、その言葉が私の中で"ママといい子"に変換される。


ママじゃない人。


ならこの人は




『誰?』




私の後ろにいるノーマンとエマの驚いたような視線を感じた。

けど多分。今日の私は勘がいい。


それを裏付けるように、その人は私達が知らない目を細め優雅に微笑んだ。





「初めまして、エマ。初めまして、ノーマン
貴女も初めまして、A」



顔が強張る。

その間も目の前の人は、まるで少女のように「ウフフフ…」と笑い声を漏らした。




「ほら、あなた達も楽にして。大丈夫よ、私達だけ。周りには誰もいない。
何も知らないイイ子のフリなんてしなくていいのよ」



「今ここでは、ただの飼育監と食用児」



『!……』




心臓が嫌な音を立てる。





「でも誤解しないでね。私はあなた達を愛している
大好きなの本当に……我が子のように愛しているわ

だからこそ諦めてほしくてここへ来たのよ」




口が歪んだ。

本気でそう言っている。


「…何を?」

ノーマンが尋ねる。









「抗うことを」

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凛香奈 - 続編楽しみにしてます! (2021年1月22日 19時) (レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱふぇ - 最高。絵上手すぎです!面白すぎてハゲそう(真顔。更新楽しみにしてます! (2020年12月19日 13時) (レス) id: 00337bf9fd (このIDを非表示/違反報告)
トエル・タウ - ノーマンと夢主ちゃんの関係、ぼたぼた涙が出てきました…。どうか幸せになってくれ…。 (2020年7月24日 14時) (レス) id: fc7aaf8032 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 0aa8d61485 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごーーく面白いです!!約ネバ好きのレイ推しなのですっごく嬉しいです!Rain (2020年6月16日 18時) (レス) id: a884ba806a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レレ | 作成日時:2019年8月29日 16時

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