119話 ページ35
「ずっと前から決めていたんだ
何年も…何年も前から」
世界のカラクリに気付いた瞬間は、まだそれほどだった気がする。
けれど大事なものが、ずっと生きていて欲しいと願ってしまう人が出来てしまった。
「俺はね、もともと勉強も読書もさほど好きじゃないんだよ」
けれどそいつはちょっとおバカだったから、出荷されないように態々教えやすさも研究して教え続けた。
そいつが何度も本を読んでとせがむから、好きな本を探す為に色んな系統のものを読破した。
最後の最後までママの目が此方へ向くように
あの綺麗な目より
「12年…待ちに待たせた
彼奴が生き延びる為なら我慢など容易い
努力ぐらい、いくらでも出来る
おかげで自分の値打ちを"最上級"にまで上げれた
「それを今夜
……食えると思うなよ？
食わせられると思うなよ？
食用だの商品だの知ったことか！」
ニイッと口角を吊り上げる。
「俺は人間だ！！ザマァ見ろ！！！」
感情で心を通わせ、明確な意志を持つ。
決して家畜なんかじゃない。
それを今日やっと証明して宣言してやるのだ。
「いいかエマ。チャンスは一度きりだ。うまくやれ
俺はの命もノーマンの命も無駄にするなよ？
それから、Aの事も頼む。……本当に、頼む」
ほんの一瞬だけ、レイの目に寂しさが滲む。
それを真正面から見たエマがキュッと唇を噛んだ。
「ああそれから、」
やるよ、と言ってレイは一冊の本を渡した。
裏表紙に挟まっていたのは数枚の写真。
「これ…」
家族の写真だ。
じわりとエマの視界がにじむ。
シュッと何かが擦れる音にエマはハッとして顔を上げた。
マッチの先端にある小さな火の玉が、やけに明るく見えた。
背景でボーンボーンと時計が日付を変わった事を知らせている。
「呪いたい人生だったけど、誰かさんのせいでそれ程悪くは無かったよ」
ふわりとテーブルクロスが揺らぐ。
「ダメッ やめて……っ！」
「ありがとう」
今日12歳になったレイは、寂しさと幸せを噛みしめるように微笑んで、
「バイバイ」
全てを終わらせ、新たな始まりを告げる火種から手を放した。
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凛香奈 - 続編楽しみにしてます！ (2021年1月22日 19時) (
レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱふぇ - 最高。絵上手すぎです！面白すぎてハゲそう(真顔。更新楽しみにしてます！ (2020年12月19日 13時) (レス) id: 00337bf9fd (このIDを非表示/違反報告)
トエル・タウ - ノーマンと夢主ちゃんの関係、ぼたぼた涙が出てきました…。どうか幸せになってくれ…。 (2020年7月24日 14時) (レス) id: fc7aaf8032 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2020年6月29日 17時) (レス) id: 0aa8d61485 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごーーく面白いです！！約ネバ好きのレイ推しなのですっごく嬉しいです！Rain (2020年6月16日 18時) (レス) id: a884ba806a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レレ | 作成日時：2019年8月29日 16時
