118話 ページ34
「本当を言うとな、俺はやっぱり「全員」には反対だ」
エマに背を向けながらレイが言った。
「ムリだと思う。崖だし…連れて行ってもドンとギルダまで、それが正しいラインだと俺は思う」
せめて歩くことさえ出来ない赤子だけでも置いていくべきなのだ。本当は。
足手まといになるなんて目に見えている。
そうなれば本来逃れる奴が庇って死ぬかもしれないし、何も出来ないまま分からないまま死ぬかもしれない赤子からしても、やはりそれは結局悲しい結末にしかならないだろう。
「けど、全員連れてったら、彼奴は多分ついて行くだろ
……あんだけ頭ラリパッパな性格してるしぶっ飛んでるけど、本当にみんなが大好きな奴だから
守ってって言ったら、自分がどんな状態でもきっと任せろって笑って前へ行くような奴だから…
だから、彼奴がここから逃てくれるなら、それでいい。
ずっといいんだ。俺にとっちゃ」
ふう、と息を吐いてレイは力なく言った。
「だから、俺からはもう何も言わない」
夜の湖の水面のような静かな声だった。
「さあ何してる。ドンとギルダに伝えて来い」
レイがそう言ってもエマは動かなかった。
不安を具現化したように眉を八の字に下げる。
「……ねぇレイ、火事を起こしてもさ…
ママがもし建物を放棄したら？」
火事に驚けど、きっとすぐに冷静に対処するだろう。
建物か商品か。
守るべきもの、優先すべきはどちらかなど目に見えている。
それに気付いたらきっと、ママは消火ではなく商品の保護を選択するはずだ。
「確かにその通り。ただ家事を起こすだけじゃ不十分だ
確実にママの手を塞がなきゃ、ママから逃げる隙をつくれねぇ」
エマが更に不安げに顔を歪めるのを他所に、レイは最後のオイル缶を手に取った。
「でも問題ない。考えてある」
蓋をあけて、オイル缶を自らの頭上に持っていき、
_____バチャッ
黒い髪がてらてらと月光を反射する。
パシャパシャと小さな水滴が跳ねる音が耳に纏わり付くように響く。
オイル缶の中身を、レイは全て自分にぶっかけたのである。
「レイ！？」
「サイコーだろ？
出荷が決まってる
絶対に捨て置けない！」
ボタボタとオイルが全身を汚すのも構わずレイは挑発的に口角を上げる。
「この日を待っていた」
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凛香奈 - 続編楽しみにしてます！ (2021年1月22日 19時) (
レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱふぇ - 最高。絵上手すぎです！面白すぎてハゲそう(真顔。更新楽しみにしてます！ (2020年12月19日 13時) (レス) id: 00337bf9fd (このIDを非表示/違反報告)
トエル・タウ - ノーマンと夢主ちゃんの関係、ぼたぼた涙が出てきました…。どうか幸せになってくれ…。 (2020年7月24日 14時) (レス) id: fc7aaf8032 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2020年6月29日 17時) (レス) id: 0aa8d61485 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごーーく面白いです！！約ネバ好きのレイ推しなのですっごく嬉しいです！Rain (2020年6月16日 18時) (レス) id: a884ba806a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レレ | 作成日時：2019年8月29日 16時
