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117話 ページ33

不可能に立ち向かわなければならない。

足掻かなければ待っているのは「死」のみなのだから。



「俺はこれが一番だと思う」


そう言って、レイが予め置いておいた箱を指差した。

蓋を開けると僅かに油の化学らしい臭いがする。


中に入っていたのは、オイル缶であった。



「夜、ハウスに火をつける」



そう言ったレイの何と言葉の重いことか。

鋭い目がナイフのようにもエマには見えた。



「…火事を起こすってこと?」


そうだ、とレイが頷く。



「ママが消火に手を取られている隙に「避難」って形で全員を連れ出す

その際地下室へ続く扉の鍵穴に何度でも何でも詰めちまえ。ママはそれで通報できない

それで本部にはあくまで「火事」と思わせる。「脱走」じゃなく」



そうなれば本部は「消火」を行うだろう。

「消火」には当然人手が必要だから本部は薄手となるのだ。


「それに夜なら姿も隠しやすい。逃げるなら夜だ」



さらにとレイは指を一本立てる。


「あとオマケでもう一つ用意した。

火炎瓶10本

森の中"死角になる岩"の陰に隠してある」



「か、火炎瓶!!?!?」

「6年ごしの準備ナメるなよ」



何故そんなものを用意してんだ
そもそもどうやって準備したんだ


そんな疑問さえあげる暇もなく、レイはさっさと次の言葉を紡ぐ。



火炎瓶(そいつ)を「橋」へ向かう途中、隣の飼育場(プラント)に投げ入れろ
上手く行きゃ第3(ここ)の他にも火事が起こって人手が割ける
夜だからまりな誰もいない。誰も死なない」





「さぁ。明日と言わず今夜 今 逃げよう」





ニンマリ笑い、レイが飄々とした顔を向ける。



できる(・・・)か?」



今からするという覚悟

けれど疑問符がついているわりには答えは「イエス」しか求めていない。



「ドンとギルダは多分…まだ起きてる。
Aはずっとベッドにいるだろうし…
弟妹(みんな)も動ける。訓練で鍛えたし」

「足は?」


反射的にすくっと立ち上がった。


「大丈夫!」


「じゃあ今から決行しよう」



ニヤリと笑って、レイはオイルを食堂の床へぶちまけていく。

油が広がっていく音だけが小さく響いた。



「……大丈夫」


徐にレイが呟く。


「ここは子供部屋から一番遠い。火が回る前にちゃんと逃げられる」


幾ばくもしない内に、床に広がるオイルもそれなりに広くなった。

薄暗くても締め切った窓の向こうからの僅かな月光がオイルに反射している。

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凛香奈 - 続編楽しみにしてます! (2021年1月22日 19時) (レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱふぇ - 最高。絵上手すぎです!面白すぎてハゲそう(真顔。更新楽しみにしてます! (2020年12月19日 13時) (レス) id: 00337bf9fd (このIDを非表示/違反報告)
トエル・タウ - ノーマンと夢主ちゃんの関係、ぼたぼた涙が出てきました…。どうか幸せになってくれ…。 (2020年7月24日 14時) (レス) id: fc7aaf8032 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 0aa8d61485 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごーーく面白いです!!約ネバ好きのレイ推しなのですっごく嬉しいです!Rain (2020年6月16日 18時) (レス) id: a884ba806a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レレ | 作成日時:2019年8月29日 16時

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