107話 ページ23
ドタッ
玄関でAを待っている子ども達にもそんな鈍い音が聞こえて、みんな一斉にお喋りを止めた。
それはまるで重い何かが階段から転がり落ちたような…
「ママ!?」
「みんなはここにいてね」
ママが音のした方へ駆け出す。
音の正体はすぐに分かった。
階段のすぐ下で、亜麻色の髪が四方へ散らばっていたからだ。
「A!」
手足を投げ出し、目を瞑るAを揺らさないようにしつつ脈を測る。
コツ、と上からの靴音に、イザベラは顔を上げた。
「気絶してるだけだよ。階段から足を踏み外しちゃったんだ」
そうでしょ?と階段を降りながら問いかけるノーマンは、この場にそぐわない程穏やかで、そして笑みすら浮かべている。
「ママー?」
「わ、Aどうしたの!?」
「大丈夫!?」
気になって様子を見に来た子ども達が、倒れているAを見るなり小さな悲鳴をあげた。
「……ええ、大丈夫よ。きっとすぐに目を覚ますわ」
だが、出荷は今日は不可能となった。
ノーマンの青い目と、イザベラの紫の目が交差する。
「Aを医務室へ運ぶわ。ノーマン、一緒に来てくれるかしら?」
「うん勿論」
脳を揺らさないようAをそっと抱き上げ、ママは歩き出す。
子ども達は心配げにしながらも素直に道を開けた。
「なんの騒ぎだ…?」
「ノーマン?」
階段の踊り場で、エマとレイが信じられないようなものを見る目で見下ろしている。
名前を呼ばれたノーマンは無言で微笑み、そしてママについていくために歩き出した。
不穏な空気が、子ども達を取り巻いていた。
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凛香奈 - 続編楽しみにしてます! (2021年1月22日 19時) (レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱふぇ - 最高。絵上手すぎです!面白すぎてハゲそう(真顔。更新楽しみにしてます! (2020年12月19日 13時) (レス) id: 00337bf9fd (このIDを非表示/違反報告)
トエル・タウ - ノーマンと夢主ちゃんの関係、ぼたぼた涙が出てきました…。どうか幸せになってくれ…。 (2020年7月24日 14時) (レス) id: fc7aaf8032 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 0aa8d61485 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごーーく面白いです!!約ネバ好きのレイ推しなのですっごく嬉しいです!Rain (2020年6月16日 18時) (レス) id: a884ba806a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レレ | 作成日時:2019年8月29日 16時