87話 ページ3
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「始めようぜ。薬剤のすり替え」
殆どは外で遊んでいて今は誰もいない廊下。
俺がそう言えば目の前にいるママは微笑んで頷いた。
階段を上りながら耳をすます。
先程から何故かシスターの姿が見えない。
気のせいか?
どこで何してる?
「排除したの」
それは唐突で、予想もしていない台詞だったから思わず振り返った。
「え?」
「シスター・クローネは排除した」
余りにも淡々と言うものだから頭がフリーズした。
そしてそれを噛み砕いて、漸く理解できた瞬間、俺は勢いよく階段を駆け上りシスターの部屋の扉を力任せに開けた。
何もなかった。
シスターの荷物も、ベッドのマットやシーツも。
まるで最初から誰も、何も、なかったかのように。
「要らなくなった。だから排除したの」
いつの間にか側にまで来ていたママが耳元でそおっと呟く。
振り返る。
目下ろしているのはただただ冷たい目。
「あなたもよ」
「……は?」
「"取り引き"は今この時をもっておしまい」
目の前の人物は、何を言っているんだ…?
色んな考えが駆け巡った。
でもそれは言葉にまでならず、益々頭が混乱していく。
「なんで……ママには俺が必要だろ!?
ママは俺を使って…あくまで水面下、間接的に穏やかにあいつらを制御したいはずだ」
だってそうでなければ俺が持ち出した取り引きに頷く訳がない。
案の定ママは「その通りよ」と眉を下げて言った。
「俺は上手くやってた。ママにとって…」
「そう、常に使える犬だった。だから側に置いていたわ」
ずいっと顔が近づけられる。
「たとえ嘘つきの裏切り者でも」
…バレて、いたのか
そりゃそうだ
ノーマンが言ってたじゃないか
俺達はママの下で育った
俺達が見えている事は、ママにも見えているのだと
「それでも、問題ないはずだろ!?
俺が
バレたバレていないは関係ない。
俺が使えれば
俺を含めて制御できていれば!
「確かにあなたに落ち度はない。これは不当解雇よ」
私だって残念、想定外と続けるママは態とらしく困ったような顔をした。
「あなたのことは最後まで手放したくなかった」
「だったら…!」
「でも事情が変わったの」
事情…?
なんの
「これからは私1人で制御する」
「ごめんねレイ
私がこれからすることを許してね」
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凛香奈 - 続編楽しみにしてます! (2021年1月22日 19時) (レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱふぇ - 最高。絵上手すぎです!面白すぎてハゲそう(真顔。更新楽しみにしてます! (2020年12月19日 13時) (レス) id: 00337bf9fd (このIDを非表示/違反報告)
トエル・タウ - ノーマンと夢主ちゃんの関係、ぼたぼた涙が出てきました…。どうか幸せになってくれ…。 (2020年7月24日 14時) (レス) id: fc7aaf8032 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 0aa8d61485 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごーーく面白いです!!約ネバ好きのレイ推しなのですっごく嬉しいです!Rain (2020年6月16日 18時) (レス) id: a884ba806a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レレ | 作成日時:2019年8月29日 16時