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episode 1 ページ2

閉じた木製の窓の隙間から漏れ出す淡い太陽の光。それが自分にとっての朝の合図である。



少しの間薄い布団の中でもぞもぞと動き、それからゆっくりと起き上がる。まるで、老人の様な朝である。

起きた後、閉じていた窓を開け部屋に光を取り込む。一応寝床はある程度の貧民なソーンの家には電気などないので外の光が電気代わりなのだ。


そこからはスイッチが入った様に、テキパキと着替え、少し硬くなったパンを一切れだけかじり、ジャルドーレ通りに出かける支度をする。

それから、家の鍵をポケットに入れ扉を閉めて街へと出かけた。


本来ならば出かける際は鍵や窓を閉めて行くべきなのだろうが、金品も殆どない、食料も殆どない、あるのは物語のアイディアメモが少しだけ、こんな家に入る泥棒などいないだろうと言う考えで鍵や窓は開けっ放しで行くのだ。


「(それに、この家に来てからずっとこんな感じだけど、泥棒が入った事なんて一度もなかったしな)」


そんな事を考えながら細い路地をするする進んで行く。
路地は臭く、葉巻などを吸っている人が多いのであまり好んで通りたくはないが、変に大通りを歩き続けて人混みに流されても困るし、目的地への最短ルートなので仕方ない。


因みに目的地と言うのは子供達の集まる広場のようなところである。そこで自分は物語を語るのだ。


自宅からそこそこの距離はある広場だが、そこが一番聞き手が多いので仕方ない。それに、聞き手が居ない所で語っても意味はないだろう。

そんな訳もあって自分は広場へ行くのだ。



広場に着くと丁度昼間で子供達はランチの時間だった。それ故に広場には誰一人としていなかった。

自分も食べたいのだが、ランチまで食べているとお金がなくなってしまうので昼は食べない様にしているのだ。



静かになった広場の木の影に腰を下ろしてお気に入りの詩集を読み始める。もう何度も読み返している詩集だが、飽きる事はない。その日の気持ちによって詩の捉え方が違ってくるからだ。

一作読み終わる頃にはもう、詩の世界へと入り込み、ランチを食べ終えた子供達の遊び声が聞こえるまでずっとのめり込んでいたのであった。

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作者名:ルーナ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年1月15日 23時

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