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貴方side

「本日はお忙しい中、お越しくださりありがとうございます」

『ありがとうございます…』

縁談相手はやっぱり社長息子で、父と交流のある会社
正直全然タイプじゃない

二人きりで散歩をしろと言われ
地獄のような空間が流れている

「こんな美人さんと結婚出来るなんて」

『…いえ、別に』

「本当に幸せものです」

『……っ、』

そこまで慕ってくれて、申し訳ない気持ちになる
相手にこの気持ちが伝わっているのだろうか

「Aさん、綺麗です」

『…あはは、どうも』

ゆっくりと近づいてくる手はそのまま頬に触れ
やっぱり体が拒絶しているのか、びっくりしてしまった

「あの、」

『っ、ごめっ、わっ!!』

びっくりしてバランスを崩す私を優しく抱き抱えてくれたお陰で、すっぽり腕の中に収まってしまった

『やっ、あの、本当にごめんなさい!!』

「えっ、Aさん!?」

逃げるように家に戻り、何とか今日は帰ってもらうことになった。もちろん、父にはこっぴどく叱られた

「お前、恋愛してきた?」

『……翔太』

「なに」

いつもスーツっぽい服装なのに今日は何だかラフな格好
そんな姿を見た事がなかったからドキドキした

「俺さ今週いっぱいで、ここ辞めんの」

『……っ、やっぱり父に何か言われたの!?』

「いや、俺の希望で辞めさせてもらうだけだから、笑」

『どうして、?』

「お前のお世話係って事で採用してもらったから、お前居なくなるなら俺もいいかーって思って」

私に近づいて頭の上に手を置かれると優しく撫でられた

「幸せになれよ、」

『翔太っ、』

「なんだよ、笑」

泣く私を見て困った顔をする翔太は優しく抱きしめてくれた
その瞬間は幸せで、やっぱり好きなんだと実感した

「結婚嫌なの?」

『……うん』

「なんで、」

『……嫌なものは嫌なの』

「そーなんだ。」

あなたが好きだから、なんて言えなかった。